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1964/2024

Body Touch

 人に触るという経験が、わたしは少ない。子供の頃に両親が死んでしまったから、中学生以降弟以外と手を繋いだことがない。そのせいか、他人に触れるということに、若干の抵抗があった。




「さて、姉ちゃん、いまの姉ちゃんとその人の間に足りていないものはなんだとおもう?」


「な、なんだろ。愛?」


「はいバカー」


「おい、顔面壁に埋め込まれたいのか」


「もっと真剣に考えろって言ってるんだよ。おれが思うに、姉ちゃんとその人に足りないのはスキンシップだ」


「す、スキンシップって、そんないきなり肌と肌が触れ合うようなこと無理ぃ……」


「なに顔赤くして布団に顔埋めてんだよ。ボディタッチくらいならそこまでハードル高くもないだろ。服越しだしさ」


「ぼ、ボデータッチ……」


「姉ちゃん、今までにその人とどんだけ触れ合った? 肩叩くとか、袖引っ張るくらいはしたことある?」


「えっと、小銭渡すときに指と指が触れ合ったことなら……」


「うわぁ童貞みたいなこと言い出したぞコイツ」


「うっさいな! 恋愛経験ゼロの人間にはたまたま手が触れ合っちゃうくらいが限界なの! そのあとしばらく手洗わなかったりするの!」


「ホントに姉ちゃん童てててて手手手ぇぇぇ!」


「不思議だよね、あんたの手ならこうしていくらでも強く握れるのに、あの人だと触れることすら無理なんだもん」


「指が……!」


「じゃあ、次なるはボディタッチ作戦ってことね」


「そ……そうなるな」


「どこ触ればいいの?」


「相手の警戒心によるなぁ。向こうがその気ならおれは太ももからいく」


「ふ、太ももて……あんた大胆ね」


「だからその気ならだって」


「どうやったら太もも触るような展開になるのかわたしには想像もつかない」


「気弱そうな女子だったらその子の太ももにジュースこぼす。そうじゃない女子だったら自分の太ももにジュースこぼす。ハンカチ越しにだけど触ったり触られたり」


「おーそうか。あんたやたらズボン汚して帰ってくることあると思ったらそういうことか」


「やめてぇ! 太もものお肉千切れちゃう! 跡になっちゃう!」


「まぁ方法としては覚えとく。他は?」


「あ、あとベッタベタなシチュエーションとして頭ポンポンとか? これはタイミングと関係性に配慮がいるが……」


「わたしがあの人にやったらまずいよね、頭ポンポン」


「いきなりどうしたって感じだな。まぁベタなところで肩叩くとか。ああ、マッサージするってどう?」


「ま、マッサージ……」


「鼻血出るほどナニ想像した」




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