Girl Friend
ただの女友達と浮気の境界線はどこからだろうか。たぶんその線引きは人によるんだろうけど、あくまでわたし基準で考えるなら、毎日チャットするくらいなら女友達ということでいいんじゃないだろうか。
「うわぁ、とうとうお達しがきたよ」
「お達し? どこから、なんのですか?」
「上から、自社のSNSの広報しろって」
「ああ、うちもようやく始めるんですね、SNS使った宣伝」
「アホらしいよねー。宣伝にSNS使うこと自体はそういう潮流だから否定しないけど、組織票みたいなことしたところで周りに差が付くわけないって」
「そういえば主任、SNSやってませんよね……あいや、やってないんですか?」
「うん、だってめんどくさいじゃん。一時期アカウント作ったときあったけど、結局さわらなくなってしまった」
「面白い人をフォローすると面白いんですよ、ああいうのは」
「まぁつまらないとは言わないけど、僕は奥さんと話してたほうが面白い」
「ぅざ……」
「なんか言った?」
「いえなにも。あ、ホントだ。わたしのとこにもメール来てました」
「アカウント作って『いいね!』しろって?」
「はい、わたしはもう持ってますけどねー。でも会社のページフォローしたくないなぁ」
「うん、プライベートまで仕事に紐付けさせていくって絶対よくないと思う。こうやって社員の人格全てを支配下に置こうとするのが大企業のやり口なんだろうね。きったないね」
「その大企業の胃の中で悪口言える神経すごいと思いますよ」
「SNSと違ってログに残らないからいいよね、現実は」
「……あ、でも主任もアカウント持つってことは、これから気軽にチャットできるということ……?」
「業務以外で気軽に話しかけられても、僕そんなマメに返信しないよ? 奥さんに睨まれる」
「ふぅん、ただの友達としてなのに、嫉妬深い……」
「ん?」
「あいや、愛されてるんですね! 奥さんに」
「結婚する前はこんなに束縛強くなかったと思うけど。今は女性と話すだけであんまりよく思われない」
「ただの女友達だとしてもダメなんですか?」
「前にそう言ったら、『女友達って英語に訳したらガールフレンドなんだけど、お前それアメリカでも同じこと言えんの?』って凄まれた」
「だってここ日本じゃん!」




