Wonderful Taste
間接キスは浮気に入るか否か。入るとする人もいれば、入らないとする人もいる。わたしの個人的な意見を言わせてもらえるなら、入る。絶対に入る。
「今日は珍しい飲み物を買ってきました」
「珍しい? マックスコーヒーとか?」
「いや、そっち路線ではないです。あとマックスコーヒーそんなに珍しくもないでしょう」
「尾先さんが買う飲み物としては珍しいかなって。で、なに買ってきたの?」
「下の喫茶店のスムージーです。マンゴーヨーグルト味」
「ふーん、スムージーなんて売ってたんだ。あの喫茶店あんまり使ったことないから知らなかった」
「ちょっと高いですが、今日は女子力を発揮しようと奮発して買ってしまいました」
「女子力とスムージーの因果関係はわからないけど、確かにランチに女性が飲んでるイメージではある。いくら?」
「四八〇円です」
「オゥ、エクスペンスィーヴ……。僕の一日のお小遣いでギリギリ買えるレベル」
「いやそれは主任のお小遣いが安すぎでしょう。高校生ですか」
「昼の弁当は作ってもらってるからねぇ。まぁ僕も今度奮発して買ってみようかな」
「あ、はい……や、あの」
「ん?」
「えーと、その……」
「なに? 僕のお小遣いの安さにそんな引くほど驚いた?」
「そうではなくて……買う前に、ひ、ひと、一口、いかいかがですか?」
「ああ、いいの? もらって」
「ひゃ、ひゃい! どーぞ!」
「じゃあちょっとだけ……」
「…………」
「えっと、尾先さん? なんでそんなに睨むの? 僕の顔になんかついてる?」
「い、いえいえ、そういうんじゃないです! すみません!」
「謝らなくてもいいけど、料理漫画の審査員みたいな飲んだ瞬間のぶっとんだリアクションを求められてるみたいで緊張する」
「あ、あはは、できたらしていただいてもかまいませんよ」
「やらないよ。……うん、予想通りの味だけど美味しい。スムージーって高いからあんまり普段飲まないんだけど、おみやげに買っていこうかな」
「…………」
「尾先さん?」
「あの、これ、わたし飲んでもよろしいでしょうか?」
「へ? うん、飲みなよ。尾先さんが買ったやつじゃん。なんでそんな改まって僕に許可取るの?」
「そ、そうですよね。では、飲みます!」
「気合い入れるほどのことかな」
「……おいしぃ……」
「でも僕よりいいリアクションだ」




