Love Rival
それはふとした出会いだった。会社帰りに立ち寄ったスーパーのレジ付近に、彼女がいた。向こうはわたしを知らないだろうが、わたしはその顔に見覚えがあった。
彼女は食料品でパンパンになったレジ袋をカートに乗せようとしているところだった。
「大丈夫ですか? 手伝いますよ」
「……ああ、ありがとうございます。ここに乗っけられれば……ふぅ。助かりました」
「お腹、大きいですね。何ヶ月ですか?」
「8ヶ月ちょっとくらいです」
「それだけ大きいとお買い物も大変ですね」
「はい、最近はあまり出かけてなかったんですが、いつも主人に任せてばかりなのもよくないですし、家にこもっているのも運動不足になってしまうので」
「は、はぁー。偉いですね」
「普通ですよ。あなたはお仕事帰り?」
「ええ、まぁ」
「懐かしい感じ。私も仕事帰りによくスーパーに立ち寄って、半額弁当買って帰ったっけ」
「あ、あはは。今日は仕事上がりが遅くなっちゃったので、晩御飯作るの面倒くさくて。弟は文句言うんですけどね」
「半額弁当も工夫次第で美味しくなる。私はよく半額になった寿司セットを手巻き寿司に再構築してプチ贅沢気分を味わってた」
「へ、へぇ……今度やってみます」
「今は夫がいるから、そんなこともしなくてよくなったけどね」
「……羨ましいです。旦那さん料理してくれるんですね」
「料理どころか洗濯も掃除も頼まずとも全部してくれる。本当にできた人」
「…………」
「ちなみに私はただ寝ている」
「ちなまなくていいです。その旦那さんは今日は?」
「うん、仕事終わるの遅いって。もうすぐ迎えに来てくれるはず」
「……わたしもそんな優しい彼氏がほしいです。旦那さんとはどうやってお知り合いになったんですか?」
「向こうから私に声をかけてきてね、『あなたのような美しい人は初めて見た。ぜひ僕と結婚してほしい』って」
「え、えーっと……?」
「だからあなたも下手に言い寄ろうとせずにじっと待つのがいいと思う。女を磨いて待っていれば、素敵な人は自ずとやってくる」
「は、はい」
「あ、あれ主人の車ね」
「そ、そうですか。ではわたしはこのへんで! お疲れさまです!」
「……ふふ、お疲れさま……尾先さん」




