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1946/2024

Herbivorous boys

 草食系男子だと思っていた人の『え、肉も食べるよ。当然じゃん』みたいな一面はわりとショックを受ける。キリンがたまにタンパク質補給のために小鳥を食べると聞いたときのような。

 



「主任って、草食だと思ってました」


「そう? 自分じゃ結構食べる方だと思うけど」


「少食じゃなくて草食。草を食べる」


「なるべく野菜取るようにしてるよ。毎晩サラダ作ってる。アラサーだしね」


「健康志向大事ですよねー、じゃなくて! 恋愛的な意味での草食です」


「ああ、草食系男子のことね。彼女にもよく言われたよ。もっと肉食になれって」


「ことあるごとに奥さん引き合いに出しますね」


「真面目に考えてみなよ。草食動物っていうのは動かない植物を食べるんであって、実際にそんな捕食対象は人間関係のなかに存在しないでしょ? だから基本はみんな肉食動物なんだよ。女性を追わない男性がいるとしたら、そいつはそもそも動物じゃなくて植物だ」


「つまり主任は植物ってことですか」


「違うよ。そんなことが言いたいんじゃないよ。彼女という草食動物にむしゃこら食べられてしまう哀れな植物って見方ができなくはないところが悲しいけど」


「奥さんから主任にアプローチしたんですか?」


「んー、どっちがどっちをって感じはなかったな。もともと会社の帰りにすれ違う関係で、挨拶からおしゃべりに発展してった。彼女も僕に劣らぬ植物」


「大学とかで男食べまくってそうな外見してましたけど」


「失礼なこと言うね君は! 彼女に限ってそれはない。……たぶんない」


「女ってわりと平気で嘘つけますよ。ていうか、わざわざ好きな相手にわたしの趣味は男あさりですなんて冗談以外で明言するやつはいないでしょう」


「まぁもし彼女がそうだったとしても僕の知ったことじゃないよ。他人の過去は他人のものだ」


「奥さんなのに他人なんですか?」


「結婚しようと他人は他人なんだって。どこまでいってもそれ以上にはならないし、なりたいとも思わないらしい。僕はただそれを尊重してる」


「……ドライな考え方ですね」


「ドライだよね。だからほら、植物だからさ、動物的な感情はないんだよ」


「だったらもしですよ? 仮にもし、わたしと主任が特別な関係になっても、奥さん怒らないんじゃないですか?」


「……たぶんめっちゃ怒る」


「言行不一致!」







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