奇縁な五百円
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。
「五百円玉を拾いました!」
「それはラッキーだったね。ただ五百円ともなると交番に届けるべきか迷うところだ」
「何を小学生みたいなこと言ってるんですか。この世界にあるものは突き詰めて考えれば私のものです」
「どの方向に突き詰めた結果だ」
「硬貨だったら偶然お財布から無くなってても気づかないレベルじゃないですか」
「五百円玉はたぶんわりと気づくぞ」
「お財布ならともかく、お巡りさんだって裸のお金持ってこられても困るでしょう」
「それはそうだけど」
「この五百円はおそらく私の日頃を行いに対するご褒美です」
「小学生みたいなこと言うなよ」
「さて、なにに使ってやりましょうかこのアブク銭」
「入手経路といい金額といい、確かにこれ以上ないアブク銭だ」
「何かに投資することでバブルを膨らませることができないものですかね」
「五百円で投資できるものってなんだよ」
「そのへんの玩具付きお菓子を買っておいて、プレミアが付くのを待つとか」
「気が長い」
「この五百円をベットして、あなたとジャンケンし、勝ったら掛け金が二倍に」
「ならないよ。僕もちょうど五百円一枚持ってるけ……ど?」
「どうしました?」
「あれ? さっき自販機で千円使ったから、五百円玉が財布に入ってるはずなんだけどな」
「…………」
「あのさ」
「あげませんよ! これは私が拾ったものです!」
「いや、別にくれとかじゃなくて、その五百円どこで拾った? もしかして僕が落としたのかも」
「落ちてたものじゃないです! 自販機の釣り銭出てくるところパカパカしてたら見つけたんです!」
「小学生みたいなことするなよ。ていうかやっぱりそれたぶん僕のだね。おつり取り損ねたパターンだ。自販機ってあの橋のたもとにあるやつでしょ?」
「違います。私の職場にある自販機です」
「嘘つけ。職場の自販機の釣り銭出てくるとこパカパカして回ってるやつがいたら正直引くわ」
「……本当は橋のとこにある自販機で手に入れましたが、あなたが取り損ねた時点でこの五百円はあなたと縁がなかったんですよ」
「君が拾ったことで戻ってきたってことは、切っても切れない縁だったとは言えないかな?」
「エンガチョ!」
「おい小学生」




