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1930/2024

ありがちな妄想

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。




「女体化、嫌ですか?」


「は?」


「昨日の話の続きです。男子というのは皆一度は女性の体に憧れるものだと聞いたことがあります」


「誰が言ってるんだそんなこと」


「『おかあさんといっしょ』でもエンディング曲で女の子になりたい男の子という歌詞がありました」


「あーあったね。懐かしい。女の子はライオンになりたいんだよね」


「たしかにライオンになりたくなるときはあります。無性に」


「あるんだ」


「あなたみたいな草食獣を前にすると特に、取って食っちまいたいと思ったことは一度や二度ではありません」


「麻酔銃用意しとこう」


「あなたは女の子になりたいと思ったことないんですか?」


「どういう動機でそう思うんだ? 性別は男性だけど女性よりも男性が好きだとか?」


「それは一般的な動機ではないでしょう。男性が女になりたい動機と言ったらそれはもう、自分で女のカラダを好き放題弄れるからに決まってるじゃないですか」


「なんで君が断言できるんだ」


「世のTS作品は主人公がだいたい自分のカラダを弄くり回すシーンが入ってきますから」


「てぃーえす?」


「トランスセクシャル、性転換の頭文字を取ってそう言います」


「君のせいで知らなくてもいい知識がまた一つ増えてしまった」


「BL界隈では邪道の一つに数えられるジャンルです。男性が女に性転換して男性とヤる場合は精神的なBLですからね」


「そっすか。よかったっすね」


「逆に女が男性に性転換する場合は精神的なNLつまりノーマルラブです。どういった展開なら許容できるかで、その人のBL世界認識、つまり腐女子としての類型分けが可能になると私は考えています」


「そっすか。よかったっすね」


「ちなみに私、男性の性転換にはあまり興味ありませんが、女が男性に性転換して好きな男性に手をかけるシチュエーションはたびたび妄想します」


「なんなの? 身の危険を感じるべきなの?」


「男になってあなたを食っちまいたいと思ったことは一度や二度ではありません」


「マシンガン用意しとこう」





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