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193/2024

花見

「そろそろお花見の季節ですね。あなたはもう見に行きましたか?」


<まだだよ。それにこっちはもう桜前線通り過ぎちゃったから見頃でもないし。君は?>


「一人で行ってもつまらないです。今週末あたり一緒に行きませんか?」


<うーん、そうしたいのは山々なんだけど、四月いっぱいは忙しくてね……。休日出勤もありえそうなくらい。ゴールデンウィークなら行けると思うけど、そうなると花見ってわけにもいかなくなるか>


「別に構いませんよ。そもそも『花』見ですから、花ならなんでもいいわけです。五月ですからチューリップを見に行きましょう」


<え? 花見って言ったら桜を見るものだろ、普通>


「固定観念を打ち破るんです。そもそも花見で花を見てる人なんて何人いるんですか? お酒飲んでドンチャン騒ぎしたいだけでしょう?」


<そこは本音と建前というか、行事なんて大抵そんなものだろ。見てる人はちゃんと見てるよ>


「とにかく桜は時期的に無理がありますし、私たちの花見はチューリップということにしましょう」


<そもそも花見って花びらが散るところを鑑賞するものだから、せめて散る花にするとか……>


「散らぬなら、散らせてしまえ、チューリップ」


<好きなのか嫌いなのかはっきりしろ。散ってきれいな花でもないからね?>


「むしろみすぼらしいというか、可哀想なことになりますよね、チューリップ。草から棒が伸びてるだけにしか見えない感じに」


<ある意味諸行無常だ。まあいいや。いろいろ難癖つけて悪かった。ゴールデンウィークはチューリップを見に行こう>


「別にあなたと一緒に見られるならどんな花でもいいです」


<……あ、そう>


「スマトラオオコンニャクでもいいです」


<それ死体の匂いがするやつだから。ムードもへったくれもなくなるから>


「近場に植物園がないかどうか調べておきますね。ふふ、チューリップを見たあとは私とチューリップしましょうね」


<どんな活用だ。そういえばそんな歌あったけども>


「あわよくばブスリップしましょうね」


<最低>





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