花見
「そろそろお花見の季節ですね。あなたはもう見に行きましたか?」
<まだだよ。それにこっちはもう桜前線通り過ぎちゃったから見頃でもないし。君は?>
「一人で行ってもつまらないです。今週末あたり一緒に行きませんか?」
<うーん、そうしたいのは山々なんだけど、四月いっぱいは忙しくてね……。休日出勤もありえそうなくらい。ゴールデンウィークなら行けると思うけど、そうなると花見ってわけにもいかなくなるか>
「別に構いませんよ。そもそも『花』見ですから、花ならなんでもいいわけです。五月ですからチューリップを見に行きましょう」
<え? 花見って言ったら桜を見るものだろ、普通>
「固定観念を打ち破るんです。そもそも花見で花を見てる人なんて何人いるんですか? お酒飲んでドンチャン騒ぎしたいだけでしょう?」
<そこは本音と建前というか、行事なんて大抵そんなものだろ。見てる人はちゃんと見てるよ>
「とにかく桜は時期的に無理がありますし、私たちの花見はチューリップということにしましょう」
<そもそも花見って花びらが散るところを鑑賞するものだから、せめて散る花にするとか……>
「散らぬなら、散らせてしまえ、チューリップ」
<好きなのか嫌いなのかはっきりしろ。散ってきれいな花でもないからね?>
「むしろみすぼらしいというか、可哀想なことになりますよね、チューリップ。草から棒が伸びてるだけにしか見えない感じに」
<ある意味諸行無常だ。まあいいや。いろいろ難癖つけて悪かった。ゴールデンウィークはチューリップを見に行こう>
「別にあなたと一緒に見られるならどんな花でもいいです」
<……あ、そう>
「スマトラオオコンニャクでもいいです」
<それ死体の匂いがするやつだから。ムードもへったくれもなくなるから>
「近場に植物園がないかどうか調べておきますね。ふふ、チューリップを見たあとは私とチューリップしましょうね」
<どんな活用だ。そういえばそんな歌あったけども>
「あわよくばブスリップしましょうね」
<最低>




