偉大な人物
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。
「近年のフィクションやゲームは、過去の偉人や伝説上の存在が一堂に会して活躍する作品が増えているようです」
「ああ、なんか流行がきつつあるね。作り手側としてもキャラクターを一から作る必要がないから楽なのかも」
「下調べは大変ですけどね。個性が出しやすいと言えば、それはたしかにそうです。他の作品と登場キャラが被ってしまっても問題になりにくいですし」
「実在人物だとね、たしかに」
「まぁ以前から戦国武将の女体化なんかはよくありましたが」
「信長公のことは言うな」
「あなたは好きな偉人っています?」
「好きな偉人か……特にこの人が好きっていうのは、今はないかな。高校大学のときは科学者とか数学者が面白くて好きだったな。変なエピソードが多いから」
「科学者……ちょっと召喚されづらい人たちですね」
「なんだ召喚って」
「戦ったら弱そうですし」
「戦わせるな。明らかに肉体派じゃないんだから」
「蚊がクシャ、って感じで」
「響きの問題か! いちゃもんだろ!」
「こう、錬金術師みたいな呪術系だったらまだ可能性あるんですけど……ふ、科学とか」
「さっきからなに馬鹿にしてくれてんの? 君が暖かいご飯を食べられるのも綺麗な空気を吸えるのも科学技術のおかげと言って過言じゃないんだぞ」
「でもファンタジー系だと科学者ってあんまり役に立たないじゃないですか。『非科学的だぁ!』とかなんとか言うだけの存在」
「そんなことないよ! ロボットものとかだと大活躍するぞ!」
「サポートとして、ですよね。最前線で戦うことないじゃないですか」
「それだと主人公いらなくなっちゃう」
「私はそういう頭脳派かつ肉体派な人物が好きです。トニー・スタークとか」
「実在の偉人じゃないじゃん。現実にいないだろ、そんな文武両道タイプ」
「シャーロック・ホームズとか」
「だからそれもフィクションだろ」
「あなた、今から頑張って目指しませんか?」
「目指さないよ。目指すにしてもだいぶ遅いよ」
「偉人になれば召喚されるかもしれませんよ?」
「フィクションのネタにされるってこと? 嬉しいパターンとそうじゃないパターンがありそうだな」
「女体化されるかもしれませんよ?」
「絶対目指さない」




