有用なレジ袋

　土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

　一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。

「いやぁ助かりました。スーパーの特売日ってついつい買いすぎちゃうんですよね」

「買いすぎだよ。荷物持ちさせられる身にもなってほしい」

「このまま家まで持ってくれたら、特別にこのレジ袋をあげましょう」

「いらない。僕、マイバッグ持ってるし」

「たまに見せるその主夫力の高さはなんなんですか」

「エコロジー意識と言え。レジ袋を買い物のたびにもらうのは地球環境にも財布にもよくない。君もマイバッグ買ったほうがいいよ」

「あなたが私のマイバッグです」

「僕の両手が塞がってて良かったな。でなければドツキ回しているところだ」

「マイバッグ、ですか。買っても結局持っていき忘れちゃいそうなんですよね」

「折りたためるやつを買って、バッグに入れとけばいいんだよ」

「となるとマイバッグを入れるバッグが必要ですね」

「え、ふだんバッグ持ち歩かないの？」

「仕事に行くとき以外はなるべく身軽でいたいのです。片手が塞がってると何かと不便ですし」

「仕事帰りにスーパー寄ったりしないのか」

「出かけるときの用事は絞るようにしています。仕事は仕事。ショッピングはショッピング。食材調達は食材調達。必要なときに必要なものを持っていきます。お化粧もしかり」

「そういえばいつも土手に来るのにも手ぶらだもんね」

「あなたもそうじゃないですか」

「男はそんなにいろいろ持ち歩く必要ないからなぁ。……すごいお節介かもしれないけど、生理のときとかどうするの？」

「すごいお節介ですね」

「すまない。気になったんだ」

「具合が悪いときは出かけません」

「急に来る場合もあるんじゃないの？」

「本当にすごいお節介ですね」

「本当にすまない。気になったんだ」

「そろそろかなと思ったら、それ用のあれを穿いて出かけます」

「な、なるほど。備えあれば憂い無しだな」

「もし穿いていないときに来てしまったとしても、実はレジ袋とタオル地のハンカチさえあればなんとかなるんですよ」

「……とんでもない絵面を想像してしまったんだけど、それで合ってるの？」

「たぶん合ってるでしょう。まぁ、応急処置ですし、私は少ないほうなのでできる芸当ですけどね」

「男には想像できない知恵だなぁ」

「マイバッグにこんなこと不可能でしょう？　決して無駄ではないんですよ、レジ袋もね」

「いやバッグ持ち歩けよ」