酒気帯びな態度
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。
「季節柄、だんだんと日暮れが早くなってきましたね」
「うん、中秋だね」
「日が暮れるのが早くなったせいか、ここのところ帰り道で酔っ払いに絡まれることがしばしばあって嫌になります」
「酔ってると理性が働かないからセクハラが酷くなるだろうな」
「最低ですよマジで。よく赤の他人に向かってずけずけと下ネタを言えるものです」
「どの口が言うのか」
「私がセクハラするのは知り合いだけですし」
「常態化するぶんさらにタチが悪い」
「それに酔ってなくてもします」
「平常運転で最低じゃねーか」
「しかしどう撃退したものですか。ナンパと違って酔っ払いは引き際というものを心得ていないので、下手にトゲを出すと危険な場合もあります」
「そうだね。酔っ払ってても力は向こうのほうが強いし、社会的なバリアでどうにかするしかないかな、やっぱり。一番手っ取り早いのは警察じゃない?」
「それだと自分も状況説明に付き合わされるので面倒くさいんですよ」
「でも面倒くさがってたら解決しないぞ」
「あー、どこかに酔っ払いに絡まれた乙女を助けてくれるヒーローはいないものでしょうか」
「面倒くさいから巻き込まないでくれ」
「絡んでくるのを逆手に取って、あえてセクハラされることで慰謝料その他諸々をふんだくるというのもありかもしれませんね」
「ありではないよ。わざわざ危険に身をさらすのも、当たり屋まがいのことをするのもよくない」
「当たり屋? これは正義の鉄拳です。理性を無くした酔っ払いの顔に冷や水を浴びせてやるのですよ。皿に盛った毒を制すです」
「それはただの毒耐性強いやつだ」
「間違えました。毒を食らわば皿までです」
「そっちと間違えたの!?」
「酒気帯び運転と同じように、酒気帯び歩行も禁止すればいいんですかね?」
「アルコール摂取したらしばらく座ってるか寝てるかしてなきゃいけないのか」
「立っててもいいです」
「疲れるわ。飲み会の後はどうするんだ」
「気に入った女の子誘ってホテルにでもしけ込めばいいんじゃないですか?」
「君からそんなリア充的見解が」
「個人的にはあっちのほうも酒気帯びでするのはやめてほしいです。臭いので」
「ああ、うん、そうだね」
「でもあなたみたいに酒気帯びしないと大胆になれないタイプは仕方ないですよね」
「通報するべきか」




