表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1916/2024

べとなむ

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。




「お腹空きました」


「そっか。じゃあバイバイ」


「……あーもう、お腹空きましたー」


「うん、だから家に帰ってご飯食べたら?」


「大丈夫です。グキュルルルル……。あっ、す、すみません」


「口で腹の鳴る音出されても。なんなんださっきから」


「ダメですねぇ。ヒロインのお腹がなったら主人公はニッコリ笑って『ご飯、食べに行こっか』って言わなきゃいけないはずですよ」


「いつもながら君の妄想の世界の都合は知らないよ」


「いつもながらなぜそんな面倒くさそうな反応なんですか」


「外食に行きたいならハッキリそう言えばいいのに」


「駅前に美味しいベトナム料理屋さんがあるんです。食べに行きましょう」


「ヤダ」


「ちょっと。ハッキリ言ったんですけど」


「僕は了承するとは一言も言ってないよ」


「行きましょうよ-。別にあなたに奢らせようとしてるわけじゃないですから。むろん奢ってくれるとおっしゃるならやぶさかではないですが」


「僕はやぶさかだ。君の要望に合わせてると食費がかさむんだよ。僕の一週間分の食費が一食で消えていく……」


「二週間分使わないだけマシじゃないですか」


「より悪い可能性と比べて現状肯定するな。どんなことにだって上には上がいるし下には下がいるんだよ。比較で真実は語れないんだよ」


「美味しいものを食べなきゃ人生の楽しみは半減だと思います」


「家で食べた方が美味しいし料理するのも楽しめる。料理しない君は人生を半分損してるよ」


「しないんじゃなくてできないんですー」


「胸を張るな」


「だいいちベトナム料理なんて一般家庭で作れないでしょう」


「作れないんじゃなくて作らないんだよ。僕パクチー嫌いだし」


「えー! 好き嫌いのないあなたが!? パクチー嫌いなんですか!?」


「雑草は食べ物じゃないから」


「私あれ大好きなんですけど! マシマシにして食べちゃうくらいなんですけど!」


「なんで勝ち誇った顔なんだこいつ」


「あなたにマウンティングできる項目が一つ増えました」


「あーそうそう、パクチー好きだって言う人って、パクチー自体が好きなわけじゃなくてパクチーが好きな自分のことが好きなんだろ」


「ブルルルルルァァァァ!」


「ごへぁ!」


「いまあなたは全てのパクチーファンを侮辱しました」


「全てじゃないよ! パクチー好きをわざわざ宣う人間だけだ! だってみんな明らかにドヤ顔して言うだろ!」


「好きを告げることに躊躇がないのは、それだけ自信があるからですよ。私はあなたが好きです」


「このタイミングでそのセリフ!?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ