表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1911/2024

しぶしぶなラブラブ

 雲一つない夕暮れ時。赤い夕日の中に浮かぶ街に、小さなため息が響きます。

 何も動かない世界の中で、二つの影だけが揺らいでいました。




「小さい頃は、世に言うラブラブカップルというやつに憧れていた時期がありました」


「ふーん。その君が言うラブラブカップルの定義は?」


「定義は難しいので例えを出しますと、砂浜で追いかけっこしたり道ばたのベンチでチューしたり肩を寄せ合ったりするやつのことです」


「イメージが古い」


「あなたがイメージできるラブラブカップルだって似たようなものでしょう」


「……かもね」


「まぁそんな感じで、私もあんなふうに人目をはばかることなく好きな人とイチャイチャできたら良いなぁなどと、青臭い想いを抱いていました。恋に恋する状態というやつですね」


「過去形ってことは、今は違うんだね」


「少し大人になってから疑問に思うようになったんです。なぜ彼ら彼女らはあれだけお互いに好き好きアピールしないといけないのか」


「アピールなの? 単にやり取りを楽しんでるってわけじゃなくて?」


「もちろん周囲に向けてラブラブっぷりをアピールしているなどという邪推はしません」


「うん。お互いに相手に対して好きな気持ちを表すのが楽しかったり、嬉しかったりするんだろう」


「でもそれが二人のあるべき姿かと言われると、私はそうは思わないんですよ。好きであることを態度で示さないと安心できない関係って、だんだん窮屈になっていきそうで」


「ずっと同じ態度をつづけるのは、確かに努力がいるかもね」


「だから私は本当に好きな人とはなんでもない会話を続けられたらいいんです。別にそこに愛の顕れなど必要ありません」


「君にとってはそれこそが真のラブラブカップルだと」


「いえ、ラブラブカップルはラブラブしているものです。物事の名称というのは与えられるものではなく、その振る舞いで決まるもの。私はそれを目指したくはありません」


「じゃあ、こんなに僕にくっつかなくていいんじゃない?」


「……どうしてか、いまのあなたとはラブラブしていないと不安になるんです」


「…………」


「こんなつまらない話、本当はしたくないんです」


「…………」


「ねぇ、そろそろやめにしませんか?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ