表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1907/2024

謎な穴

 土手に座り込み、凍りついた夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛もない会話を始めます。




「ドーナツの穴って、なんであいてるんでしょう?」


「久々に超絶どうでもいい疑問が掲げられたな。ドーナツは元々穴のあいていないボール型だったんだよ。そこからトーラス形状へと変化した経緯には諸説あるけど」


「とーらす形状?」


「おなじみのドーナツの形のことを幾何学の言葉でそう言う。君がよく知るところでは、RPGのワールドマップも上下左右が反対側と繋がっているトーラスだ」


「ああ、言われてみればあれって球形じゃないですね。それで、今のドーナツ型になった経緯というのは?」


「一説には穴のあいていないドーナツよりもあいてるドーナツのほうが熱が通りやすいかららしい」


「なるほど。てっきり棒や紐に通して陳列しやすいからだと思ってました」


「そんなふうに店先に並べられてるドーナツ見たことないだろ。棒なんかにスタックしたら一番下のやつから容赦なく潰れてくだろ」


「ドーナツ食い競争するときに吊り下げやすいというのも私のなかでは有力な仮説でしたが」


「まずドーナツ食い競争なんていうのを初めて聞いたし、パン食い競争と比べて食べにくいと思う。咥えたそばから半分ちぎれてもったいないことになると思う」


「もちろん落としたらその場で失格。その難しさがゲーム性を生むのです」


「本当にドーナツの穴がそのために作られてるとしたら、ドーナツ食い競争はもっとメジャーな競技になっていてもおかしくない」


「難しすぎるゲームというのは流行らないのが世の常。コンボイの謎しかり、封印されし記憶しかり」


「前者はともかく後者はテクニックの問題ですらないやつ」


「もう一つ私が考えたのは、ボールドーナツを作るときに残ったカス説」


「もったいな! わざわざくり抜く意味ないだろ! 丸めろよ!」


「火が通りやすいという理由もわかるようでよくわかりませんよ。だったら最初から小さめサイズで作ればいいじゃないですか」


「それはまっとうな指摘だね。だから説の域を出ないんだと思う」


「実は違う理由があるのだと思います。真実というのはたいていしょうもないものです」


「君の考えることがしょうもないだけじゃないのか」


「リング状にすると持って食べやすくなりますから、発明者はおそらく女の子がドーナツを両手に持って食べる仕草に萌えを見出したのでしょう」


「特殊性癖過ぎる」


「袖余りの女の子がドーナツを両手に持って食べる仕草に……」


「よりマニアックにしなくていい。というか、それだったらリング状より棒状のほうがよくない?」


「……は?」


「いやいや、あくまで一般論だよ? 男性の一般論」


「…………」


「ゴミを見るような目で見るな」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ