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 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「本当にごめんなさい」


「ん」


「あの……顔、まだ痛みますか?」


「痛い」


「そ、そろそろ氷嚢交換します?」


「いい」


「えっと……怒ってますよね?」


「うん」


「あー、どうすれば許してもらえますか?」


「昨日の夜起きたことをちゃんと説明しろってさっきからずっと言ってるだろ。朝起きたら全裸で居間に倒れ伏していた上に顔がアンパンマン級に腫れて鼻血出してると気づいたときの僕の気持ちが分かるか?」


「元気百倍!」


「黙れ」


「う、やっぱり現物で謝罪の意を示すべきでしょうか?」


「そうじゃなくて、どう謝られてもどんな悪いことされたのか記憶にないから許しようがないんだよ」


「思い出さないほうがいいこともありますよ。飲み過ぎたんだってことにしておいてください」


「何をどう飲み過ぎればあんな追い剥ぎにでも遭ったような事態に発展するんだ。隠そうとしないで正直に話せ」


「……今から話す物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは何ら関係ないんですが」


「変な気を回さなくていい」


「トランス状態のあなたにコックピットを開放したら、意外にも搭乗してきたんです」


「……酔っ払った僕を誘ったらノってきたんだね。で?」


「そしたらモンスターが巨大化したのでこちらも戦闘モードに変形し、バトルフィールドに移動しました」


「寝室に行ったんだね。っていうかその日曜朝の戦隊モノみたいな隠喩やめてくんない? 何対策なの?」


「万を辞して合体! となったとき――ほら、やっぱり初めてですから、接合部が狭くてなかなか成功できないわけですよ。あ、成功って失敗成功の成功ですよ念のため」


「…………」


「しかも予想以上に痛くて、それを訴えても尚あなたが強引に合体しようとするので緊急解除しました」


「つまり殴ったんだね」


「何発か。解除後も懲りずに合体を迫ってきたのでバトルフィールドから追い出しました」


「……ごめん」


「な、なんであなたが謝るんですか。憎むべきは悪の組織です」


「自分の非は認めないのか。とんだ濡れ衣だよ悪の組織」


「私も今回は反省します。もう二度とあなたをお酒の勢いに頼らせるような真似はしません」


「僕の理性が敗北したみたいな言い方するな。実際そうだったかもしれないけど。……君は怪我しなかったんだよね?」


「大丈夫です。血は出なかったのできっと破れてません」


「そうじゃない。いやそれもあるけど」





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