ヨーグルトダイエット
雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。
「最近、飲むヨーグルトにハマってまして」
「ああ、少し高いけど美味しいよね、あれ」
「ジュースやアルコールと混ぜて飲むと最高に美味しいです」
「糖分摂りすぎないように注意しなよ。元から結構砂糖入ってるやつもあるからね」
「しかも飲むヨーグルトを飲むようになってからお通じがすごくよくて」
「飲むヨーグルトを飲むってなんか引っ掛かる言い方だな」
「食べてしばらくしたらトイレに超特急で腸特急です。もう出るわ出るわですよ」
「仮にも女の子があんまり露骨な表現使うんじゃない。あとそれ、通じがいいっていうか腹下してない? 賞味期限大丈夫?」
「おかげで最近体重が二キロ落ちました。ヨーグルトダイエットってやつですね」
「元々細身なのにさらに落としてどうする。しまいに死ぬぞ」
「しかもしかも、飲むヨーグルトってヨーグルトじゃないですか」
「何言ってんだコイツ。ホントに大丈夫? 意識はっきりしてる?」
「ちゃんと最後まで聞いてください。ヨーグルトってことは、量が少なくなっても牛乳を足して放置しておけば」
「発酵してまた飲むヨーグルトが出来上がるって言いたいのか」
「ザッツライト! この永続繁殖によって私は無限のリソースを手に入れ、ヨーグルト菌の千年王国を築くのです!」
「無理だろ。市販のやつは味とか調整してあるだろうし、種だって殺菌されてるから増えないと思う」
「え、そうなんですか? じゃあ私が今まで飲んでいたあれは一体……」
「ただの腐った牛乳だよそれ! っていうかもう実行してたのかよ!」
「そ、そんなはずありません! 味はちゃんと飲むヨーグルトです。ほら」
「食中毒者を増やそうとするな。君の味覚ほど信用できないものないんだから。貧乏性発揮しないで普通に販売してるやつ買えばいいのに」
「これが腐った牛乳……? ちゃんとヨーグルトみたいに酸っぱいのに」
「発酵と腐敗の違いってね、人類に有益な菌が分解したか有害な菌が分解したかの差らしいよ。あと知らなかったなら教えてあげるけど、腐りかけのものは基本酸っぱい風味があるよ」
「……ま、まあ、ここのところストレス溜まって少し太っちゃってたので、ダイエットとしてちょうど良かったかもしれませんね」
「強がりなのか超ポジティブなのか」
「あなたもどうです? 腐った牛乳ダイエット」
「殺す気か」




