謝罪
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
「一日で戻って来られて良かったですね。昨日アパートを訪ねてもいなかったので心配しました」
「病院に二泊したからね。で、他に言うことは?」
「ツッコミがいないと会話が成立しなくて大変でした」
「他に言うことは?」
「え、他に……? もう拾い食いなんてしちゃダメですからね、とか?」
「うん、もう君の料理は二度と食べない」
「そ、そんな邪険な言い方しなくても。……えーっと、ごめんなさい」
「謝っただけじゃ許さないよ」
「めんどくさい人ですね」
「君が言っていい台詞じゃないからねそれ」
「分かりましたよ。おっぱいなら好きなだけ揉んでいいですから、それで勘弁してください」
「何をどう分かればそうなる。」
「え、もっと過激でないとダメですか?」
「とりあえずその押してダメなら倍プッシュみたいな思考回路がダメだよ」
「そう言われても性分なので。じゃあ次の休みにデートしましょう。それで許してください」
「それなら、まあ」
「あれ? 半ば冗談だったんですけど。何か悪いものでも食べたんですか?」
「食べたよ」
「そうでした。でもデートってことは、結局おっぱい揉むんですね」
「どうしてそうなる。君にとってデートってなんだ」
「男が女のお出かけに付き合う代わりに性的満足を要求する行為です」
「悪魔の辞典でも引いたのか。え、なに、僕をそういう目で見てたの?」
「母にはそう教わりました」
「達観し過ぎだろお母さん。過去に何があったんだよ」
「挨拶に行くときは覚悟してくださいね。父もかなりの曲者なので」
「お、おう。って今からそんな話してどうする」
「デートは私の実家に行くとかどうでしょう?」
「スリリングってレベルじゃないから。いろいろ飛ばしすぎだから」
「今なら慰謝料と治療費請求できますよ?」
「知らない男が娘を貰いにきたと思ったらお金を貰いにきただけだったとか」
「お義父さん、お金を僕にください」
「殴り飛ばされそう」
一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。




