表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/2024

ことわざ

 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「『豚もおだてりゃ木に登る』ってことわざがあるじゃないですか」


「どんな人でもおだてれば従来以上の力を発揮するって意味だね」


「私、これがどうにも気にくわないんですよ。だって登れませんもん、豚」


「またどうでもいいことを……。諺にいちいち文句つけるなよ」


「いえ、他の諺は共感できたり納得できるものばかりです。馬の耳に念仏、そりゃ意味ないですよね。覆水盆に返らず、こぼしちゃった水をお盆に戻すのは無理です。東大モトクロス、勉強もできてモトクロスもできたらそりゃあもう無敵です」


「最後のは違う」


「でも『豚もおだてりゃ木に登る』は明らかに変です。手元の辞書で『諺』を引くと『古くから言い慣わされていた言葉。教訓、風刺』なんて書いてありますけど、前提として万人が納得いくようなものじゃないとダメでしょう?」


「君の感性が万人から外れてるって結論にはならないかな?」


「じゃああなた、豚が木に登ってるところ見たことあるんですか? おだてたことすらないでしょ?」


「あったら相当な変人だ。小学生みたいな屁理屈言うな。だいたい共感できない諺なんて他にいくらでもあるだろ。『腐っても鯛』とか」


「ああ、あれは確かに変ですよね。腐った鯛を食べて死んだ将軍だっているというのに、教訓が全く生かされてません」


「『船頭多くして船山に登る』とか」


「それはワンピースで見ました」


「共感できるのかよ」


「『ヘソで茶を沸かす』とか『喉から手が出る』とか『頬っぺたが落ちる』とか、実際そんなことになったらホラーです」


「言葉の綾を掘り返し始めたらキリがないってことに早く気づけ」


「『雀百まで踊り忘れず』も変です。百まで生きませんよ雀。踊りって、ディズニーですか」


「どんなツッコミだ。確かにモノや動物がよく踊ってるけども」


「それから『金がものを言う』も『膝が笑う』も『目くそ鼻くそを笑う』もおかしいです。ディズニーですか」


「そんなもん出てきてたまるか。モノが喋ったり踊ったり笑ったりすればみんな夢の国か」


「『目くそ好きの鼻くそ嫌い』とかなら納得できます」


「するな」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ