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140/2024

昼食

 雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。




「んー……おかしいですねぇ」


「預金通帳なんか見つめてどうしたの?」


「いつもカードでお金を引き出してて、今日久しぶりに記帳したんです。そしたらなんだか残高が思ってたより低くて」


「普段から使いすぎなんじゃない?」


「心あたりがありません。確かにお菓子買ったりお昼にファミレス行ったりはしてますけど……」


「ありまくりじゃんか。え、昼食ファミレスなの? 毎日?」


「はい。うちの職場、社食ないですから」


「だったらせめてコンビニ弁当とかで間に合わせようよ」


「コンビニまで歩くのがめんどいです。往復で昼食分のカロリー消費しちゃうじゃないですか」


「そんなわけないだろ。どんだけ燃費悪いんだ。アメ車か」


「閑話休題、昔は隣の会社の社食で食べてたんですけど、ダメって言われちゃって」


「何したんだよ」


「ご自由にお使いくださいと――」


「わかった。もういい。要するに君が純粋で馬鹿で非常識だったんだね」


「自由の意味を履き違えてる人が多くて困りますね」


「お前だ」


「まあそんなわけでファミレスを常用してたんですが、これはお金の遣い方を再検討する必要がありそうです」


「コンビニ弁当にすればいいだけの話だろ」


「今度から平日のお昼はお弁当にしましょう」


「その手もあったか。もちろん自分で作るんだよね?」


「私がそんなもの作れるわけないでしょうが!」


「逆ギレするな。まさか僕に作らせる気? おにぎりでも握って持ってけばいいじゃん」


「嫌です。あなたに作ってもらったお弁当を同僚に見せびらかすから愉しいんじゃないですか」


「そういうことしてるから友達いなくなるんじゃないかな?」


「そういえば見せびらかせるほど仲の良い同僚なんていませんでした……」


「……作ってあげるよ、もう」


「ホントですか!? 愛夫弁当楽しみです。ハムカツはハートマークでお願いしますね」


「ギザギザ過ぎる」


「まるで私みたいです。触るものみな傷つけた」


「古いよ」





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