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134/2024

節分

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「今日は節分ですね。豆まき用に落花生を買ってきました」


「珍しく用意がいいね」


「本来は落花生じゃなくて炒り豆をまくんですが、スーパーにこれしか売ってなかったんです」


「片付けやすいから、東日本では落花生が主流になったらしいよ。伝統を守るなら炒り豆のほうがいいんだろうけど」


「そんなに合理性を突き詰めるなら、落花生より鉈豆のほうが拾いやすいでしょうに。鉈、なんていかにも鬼を追い払ってくれそうですし」


「どんな豆か知らないけどたぶん常食されるようなものじゃないだろ。処分に困るよ」


「片付けるのが大変だとか処分に困るとか言うなら、最初からまかなきゃいいんです」


「極論言うなよ。そういうわけにもいかないだろ」


「鬼は外、福は内って言いながら投げる真似だけしてればいいじゃないですか」


「効果なさそうだなぁ」


「豆程度で逃げていってくれるんですから、鬼のノリの良さも相当なものです。たぶんエア豆まきでもノってくれます」


「ノリとかじゃなくて、鬼は豆が苦手なんだよ」


「なら豆製品ならなんでも良さそうですね。豆腐とか納豆とか」


「そいつらは投げると間違いなく大惨事になる。もういいから早くまこうよ」


「ただ豆をまくだけでは面白くないので、ここは豆をいろんなところに隠して探し出すというゲームをしましょう」


「完全に別系統の行事になった。まじめに遂行しろ。節分なんだから」


「それじゃ最後の落花生がどうしても見つからなくて、夜ベッドの上で私を脱がせてみたらパンツの中から転がり出てくるっていう展開ができないじゃないですか」


「するな」


「幸せはこんなところにあったんだね、めでたしめでたしって」


「ならないよ」


「これがホントの」


「福は内、とか言ったら豆投げつけるからな。全然うまくない」


「ちなみに節分のもう一つの目玉行事、恵方巻きは買ってきてません。この意味がわかりますか?」


「わざわざ作るの? 材料なんてないよ」


「ちなみに私が今向いている方角は南南東で、目の前にあなたがいます。この意味がわかりますか?」


「僕が必死に鉄板ネタを回避しようとしてるのがわからないのか?」


「ちなみに恵方巻きはその由来がそもそも男性器だという説もあります」


「伝統とか文化からたまに漂う人間の業みたいなものをとても残念に思う!」





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