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111/2024

しこう

「ふうううう、寒い寒い寒い……」


「おかえり。今日は珍しく君のほうが遅かったか」


「電車が雪で遅れてたんです。大雪ですよ外。あなたの実家に行ったときと同じくらいあるんじゃないですか?」


「昨日から降ってたからね。道路も凄かったでしょ」


「はい。おかげで靴がびちょびちょです。こんなに濡らして、いけない子ですね」


「何言ってるんだコイツ」


「もう足が冷たくて冷たくて。はぁーコタツコタツ……って、ついてないじゃないですか! ガッテン!」


「ガッデムね。納得してどうする」


「この寒いなか帰ってくる人間がいるというのに……。コタツくらいつけといてくださいよ。気が利かない人です」


「入る人間がいないのにつけるわけないだろ。もったいない」


「エアコンも最低温度って……これじゃただの送風と変わらないじゃないですか。節約して風邪ひいたら意味ないと思うんですけど。多少フトコロは寒くなっても、部屋は暖めるべきです」


「上手いこと言ったつもりか。別に僕はこの気温で快適だから。君が寒がりなんだよ」


「女の子に冷えは禁物なんです……あっ、あれでしょう? 部屋を暖めなければ、寒がりの私が――こうやってくっついてくると期待して」


「料理の邪魔だから離れろ。僕はそんな低レベルな思考の持ち主じゃない」


「ほほう。ではこうしておっぱいで背中を摩擦してくると期待して」


「『嗜好』のレベルを上げるな。僕は『思考』って言ったんだよ」


「これは失礼。発音が同じなので間違えちゃいました。まさか房中術などという高い志をお持ちとは」


「日本語難しいけどネイティブなんだからさ、そこはわかろうよ。『志向』じゃなくて『思考』だって」


「確かに、あれは男性にとってロマンの最高峰でしょうね」


「『至高』じゃなくて『思考』! どうあっても僕を変態にしたいのか!」


「なるほど、一度試してみるのもいいかもしれません」


「『試行』じゃなくて……! 『思考』だっつってんだろ! 『し・こ・う』! 『シンク』!」


「洗い場なら目の前にありますけど、どうかしましたか?」


「『sink』じゃねーよ! 『think』だよ! 二ヶ国語使って通じないってどういうことだよ! いい加減この親父ギャグみたいな鬱陶しいやり取りやめろ!」


「ただの言葉遊びがそんなに『辛苦』ですか?」


「ダマレェ……!」

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