ハイテンション
「ごちそうさまでした」
「あれ、もういいの? 晩御飯残すなんて珍しいね」
「あんまりお腹空いてないんです。残りはお夜食にします」
「短時間睡眠なんて妙なことするから調子悪いんじゃないの? 無理しないほうがいいよ」
「無理だなんてとんでもない。絶好調もいいところです。全身に魔力が溢れているのを感じるくらい」
「それ病院行ったほうがいいぞ。調子がいいんじゃなくて、ほぼ徹夜状態でテンション高くなってるだけじゃないか?」
「まー実質一時間半しか寝てませんからねー。実質一時間半しか」
「なんかウザいんだけど。顔が中心に寄って見える」
「しかしこんなに寝てないのに眠気をほとんど感じません。素晴らしいの一言です。これがダ・ヴィンチの力……! ゴゴゴゴゴゴゴ」
「口で擬音語言うな」
「今の私ならばあなたを押し倒し、無理矢理既成事実を作り出すこともできるでしょう」
「殴るからねそんなことしたら。別にいつもより筋力が上がってるわけじゃないだろうに」
「試してみますか? じゃーんけーん……」
「力使え」
「別に指相撲でもかまいませんが」
「力使えって」
「では腕相撲でもいいです。フォースの力を見せてあげましょう」
「さっきから力に統一感ないなぁ。あとフォースの力って訳したら力の力になるよね。いや突っ込んじゃいけないことは分かってるんだけどさ」
「では始めますよ。負けたほうは今夜中に十万ベル稼ぐってことで」
「ゲームしてない僕に何の利益もないんだけど」
「よーい、ドン! んふぅ!」
「…………」
「くぅ! んんんっ! ふぉぉ! んぎぃ!」
「…………」
「んあぁぁぁ! はぁ……はぁ……ふぅ……まぁ、こんなもんですかね」
「どんなもんだよ。全然倒れないどころか動かないよ」
「実質一時間半しか寝てないので」
「それが力の源じゃなかったのか」
「ああ、無駄に体力を消費しました。今日中に十万ベル稼いでローンを返済しなければいけないというのに」
「……僕は風呂入って寝るからね」
「おやおやもうおねんねですか」
「誰だよ。遅寝で調子乗るやつとか初めて見たよ」
「ハッハ、長時間眠らなければ体調が保てない劣悪種は大変ですねぇ。その点、夜の高等遊民たる私にはこれから九時間ほど自由時間が残っています。くじかんなのにじゅうじかんとはこれいかに!」
「頭打って気絶してくんないかなコイツ」




