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『光よりも速く! 光よりも遠く!! 法則なんてひとっ飛び!!!』で。


 『ほんの五分前、貴方に会った。

  ほんの五分前、小声でご挨拶。

  ほんの五分前、それで分かった。』


 『ほんの五分前、貴女に会った。

  ほんの五分前、初めて想った。

  おおきな声で、それを伝えたい。』


 『見つけたわ。』


 『見つけたよ。』



「あなた、いったい何者なの?」若干九才の女の子、“山岸ナオ”は訊いた。


「ぼく?」と年齢不詳の赤毛丸顔宇宙人は答えた。「ぼくはミスター」


「ミスター?」


「ぼくの知ってる君のお母さんに頼まれてやって来た。君をまもって、彼女のもとに君を連れて来るようにってね」


「わたしを守る?」


「ついでに、ありとあらゆる宇宙も救うけど」


「へ?」


「よーし。いくよ、ナオちゃん。しっかりつかまっ――」


 と、そうしてふたりは、ミスターなる宇宙人が作ったジャンプポータル――別の時空や世界や宇宙やおとぎ話へと繋がるための玄関口――へと跳び込んで行った。……というのは前回、第五話の前にお見せしたとおりであるが、なんかここだけ見ると、


「お、なんかこのミスターってひとカッコよくない?」


 と勘ちがいされる方もひょっとしたらおられるかも知れないので急いで訂正しておくと、このミスターなる赤毛エイリアンは、たしかに頭は切れるし、神羅万象さまざまなことを知っていたりもするし、すっげー高度な科学技術を駆使したりなんかもするのだけれど、それでも基本は、よく言えばドジっ子、悪く言えば生粋のトラブルメーカーで、それは例えば、マー●ル・シネマティック・ユニバースで言うところのドクター・ス●レンジ先生、彼を更にお間抜けにしたような感じであったりする――いや、もっとひどいかも。


 そう。それは例えば、先ほどのジャンプポータルの例で言うと、本来あそこに跳び込む人間は、跳び込む前に、行き先がどこかとか、跳び込んだ先にヒトやモノが置かれていないかとか、そういったKY(危険予知)活動の理念に沿った事前確認や、同道者がいる場合はその相手に、亜空間酔いによる心身の不調や人体組織変性のリスクなんかを説明したりするのが、まあなかば常識みたいにものになっているのだけれど、なんて言うかこの大バカ野郎、九才の女の子の前でカッコ付けるのに忙しかったのかどうかは知らないけどさ、その辺の行き先設定とか、到着場所の事前確認とか、ナオちゃんへのリスク説明なんかはまるっと飛ばしてポータルジャンプ。そんなことをしたもんだから、そりゃもう、到着先で大変なことになるのは目に見えているワケですよ。そう。例えば、こんな感じで――、


     *


「走って! 走って! ナオちゃん! もっとはやく! もっと! 疾風のように!」


 と問題の大バカ野郎は叫んでいた。『銀河最速』とも呼ばれたこともあるその逃げ足で、ひとり先行して。すると、


「だ、だめ、だめ、だめ、ミスター、こ、こ、これ、これが! せ、精いっぱい!」


 と山岸ナオも叫んでいた。息も絶え絶えに。問題の大バカ野郎を、「あ、ちょっとカッコいいかも」と想ってしまった自分を後悔しながら。


「精一杯なことあるもんか!」バカは続けた。彼女との距離はどんどんと離れていたが、「君たち地球人には、『火事場のクソ力』なる神秘の力が備わっているはずだろ!」


「でも! 実際!」ナオは返した。「これ以上! はやくは! 走れないのッ!」と、どんどん遠くなるバカの背中を恨めしく想いながら、「あと! 『クソ』なんて言葉! 使わないで!」


 うん。


 実際問題、彼女は九才の女の子にしてはかなりな速度で走っていた(50m走換算だと8秒前後)。きっと、その生命の危機に際し、彼ら地球人に備わっている神秘の力『火事場の馬鹿力』が発動(注1)、「疾風のように~♪」と歌い出すほどではないにしろ、彼女の生涯ベスト3には入るくらいの脚力を見せていたのは確かであった。であったが――、


「ね、ねえ! ミスター! なんか! こう! こういうとき用の秘密道具とかってないの?!」とナオは叫び、


「こういうとき用のってどんなだよ!」とミスターも叫び返すが、


「空を自由に飛べそうなやつとか! いつでもどこにでも行けそうなドアとか!」


「そんなの! F先生に怒られるじゃないか!」


「じゃ! じゃあ! あれは! 『きびたろう印の――』」


 うん。


 ごめん、ナオちゃん。それもやっぱり先生に怒られるだろうし、そういうマンガみたいな道具は持っていないからこそのミスターって大バカ野郎なわけでして――、


「じゃ! じゃあ! どうやってコイツから逃げればいいのよ!」


 とナオちゃんも言うとおり、彼女は現在、生涯ベスト3くらいの脚力を持ってしても逃げ出せない相手から追われていたし、その相手とは、仮にその相手に追い付かれれば、彼女の生命が危機に瀕するほどの相手であった。と言うのも――


「グォー、ガルルルル、グオォーーーッ!!!」


 とこの咆哮からもお分かりのとおり、彼女を追ってる相手とは、全長約13メートル、体重推計約9トン……はあるんじゃないかなあ? な巨体を震わせる、ティラノサウルスそっくりなケモノ(紫色)だったからである。とここで、


「きゃぁあああああああ!!!」と叫んでナオもギアをトップに入れた。「なんで、なんで、なんでこんな目に!!」と、我が身の不幸をふり返りながら。


     *


 と、言うことで。


 こちらは、こちらもこれまたよく分からない不思議な場所――とおい丘の向こうにはふたつの青い月が見え、彼らが走る草原は一面の白色。ぱっと見だけなら那須とか日光あたりのそれに見えなくもないけれど、それでも絶対そことは違う場所であり、なんでそんなだだっ広い草原でナオちゃん&ミスターが肉食(だと想う、多分)の恐竜もどきに追い掛けられているのかと言うと……、


     *


「きゃっあぁああああああああ!!!」


 と、この追っ掛けっこからさかのぼること一時間ほど前、問題のジャンプポータルへと跳び込み、落下し、その亜空間の歪みというかこんがらがった量子のもつれみたいなものに「おぇ」ってなりながらも上昇しては落下するをくり返していた彼らもついに、


「あ、ほら、ナオちゃん、出口だよ」


「い、いいから、はや、はや、はやく、出て、出て、跳び込ん……おぇ」


 と、しろく輝く出口へと跳び込んだはいいものの、そこはもちろん、前述のように、その辺の行き先設定とか到着場所の事前確認とかはすっかり忘れられておりましたので、


 ポンッ。と飛び出し、


 ドンッ。っていうか、


 ボヨン。と着陸したのは、なにやら小高い丘のうえ。一面の白い草原のなか、そこだけ何故か紫色をした柔らかい地面の上でありました。


「きれい……」とそこにひろがる風景に、この世とは想えない美しさ(まあ、実際別の宇宙だし)を感じるナオちゃんでありましたが、それもつかの間、


「グァフー、ガァフォオー」と地面が奇妙なうなりをあげ、


「なに? この音?」とミスターの方をふり返る彼女ですが、そのミスターはミスターで、


「しーっ」と人指し指を口にあて、へっぴり腰でそこから離れようとしていました。


「どうしたの? ミスター」


「しーずーかーにっ。いいからゆっくり、こっちへ来て……」


「なんで……?」


「どうやら、彼女の睡眠を妨害しちゃったみたいだ」


「“彼女”?」


「ガァアルゥウウゥウウ―――」


     *


 みたいな?


 ぐっすりスヤスヤ睡眠中の大型獣脚肉食恐竜そっくりな彼女の頭の上に着地、彼女を目覚めさしてしまったからなのでありました。そうして――、


「いいから! もっとはやく! もっとつよく! 『光よりも速く! 光よりも遠く!! 法則なんてひとっ飛び!!!』で」とDCコミック派のミスターは叫びますが、


「そ、そ、そんな、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、こ、こんなの、クイックシルバーでもなきゃ、逃げられな――」とマーベルコミック派のナオちゃんはピンと来ないどころか色々限界。なのでそのため、


「ああ、もう、仕方がない! このまま飛ぶよ!!」と、ふたたび目の前に新たなジャンプポータルを開くミスターであります。が、


「え……? 行、行き先設定とかはッ?!」とナオちゃんも心配するのも当然。そもそも今回のこれも、もとはと言えば、そこをおろそかにしたために起きた哀しい事故……のはずなのですが、


「このまま彼女にお(*検閲ガ入リマシタ)るよりマシだろ?!」とミスターは叫ぶと、


「で、で、でもでもでもでも!」と嫌がるナオの手をつかみ、


「いいから! はやく捕まって!」とそのまま、


「だ、だってだってだってだって!」


「ギャォーーーーッウ、ガルルルルルルル、バォオォォォォーーーッ!!!」


「ああ! もういい! 行くよ!」


 ポワン。


 キュキュッ。


 ヒュン。


 と、まあ、そんな感じでふたたび、どこのどこやら分からない世界というか宇宙というか時間と空間へとジャンプするふたりなのでありました――大丈夫かな?



(続く)

(注1)

 ご存知の方も多いかとは想うが一応の補足。

 そもそも我々地球人に備わっている能力は『火事場の馬鹿力』であり、『火事場のクソ力』は本来キン肉星の王家筋にのみ代々伝わる能力で、それ以外で使われる例としては、よくて戦う超人たちがキン肉族の魂とかソウルとかウルトラ・ソウルとかに触れ発動するくらいのものであり、まあ先ず間違っても、ここで生粋の地球人であるナオちゃんが発動しちゃうようなものではない。なのでそのため私はここで、はっきりそのふたつを分けて表現させて頂いたのである。

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