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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第五章 聖女、アプローチされる

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72.その他にも指示がございまして

 タイロン氏が語った所に寄れば、そのミルガンテ人が現れたのは中世期だったそうである。

 場所は英国イングランド地方。

 ある日突然、どこからともなくふらりと集落に立ち寄った男は誰にも判らない言葉を話した。

 当時はそういったことは珍しくなかったらしい。

 ローマ帝国の衰退と共にブリテン島は色々な勢力が入り乱れ、欧州のあちこちから商人や傭兵、食い詰め者などが集まってきていた。

 まともな統一政府がない中、武力と組織力に優れた集団が支配圏を争っていて、素性が怪しかろうが言葉が通じなかろうが役に立つと思われれば雇われる事が出来た。

 その男は数年間の傭兵生活で言葉や習慣を習得すると、とある土地に本拠を構えて人を集め、自らが首長となって街を築いた。

 ただし闇雲に勢力拡大に走ることなく、侵攻してくる敵対勢力を撃退しつつ小規模だが確固たる組織を作り上げたという。

「その人が聖……神力を使えたというか、ミルガンテの者だったと?」

「そう伝えられております。

 それだけではなく、数々の予言を残しておりまして、子孫はその予言に従って力を維持しつづけたと」

「予言ですか」

 タイロン氏が深く頷いた。

「私も写しを見たことがありますが、個々人の運命ではなく大まかな世界の歴史ですな。

 実を言えば神力よりそちらの方が重視されております。

 どうやら始祖は未来から来たようでございまして」

 え?

 聖力目当てじゃ無いの?

 ていうか聖力の話が出てこないんだけど。

 シンも疑問に思ったようだが口を挟むことはなかった。

 タイロン氏は淡々と続ける。

「予言の書とは別に、始祖が残したとされる指示がございます。

 その指示に従って一族の者は監視(ウォッチ)を続けてまいりました。

 また、指示にはくれぐれも一族が世界の運命に介入すること無きよう、戒められております」

「ああ、つまり予言を利用して儲けようとか支配圏を拡大しようとかするな、と?」

 シンが軽く言うとタイロン氏は破顔した。

「おっしゃるとおりでございます。

 始祖は慎重な性格だったようで、子孫が表舞台に立つことはまかり成らぬと」

 何か思っていたのと違う。

 レイナはアニメやライトノベルのせいもあって自分に接触してくる組織は世界規模の強大なものだと思っていた。

 それも裏から世界を支配しているような後ろ暗いものだと。

 アニメではそうなっている。

 だけどよく考えてみたら、そんな組織があるんだったら世界はもう少しまともになっていたような気がする。

 現実は強大な支配者がいないからこそ、ここまで乱れているのか。

「その他にも指示がございまして」

「それが『ミルガンテ』だと」

「はい。

 その名、もしくは類似語を名乗る者が現れれば世が乱れる可能性がある故、慎重に対処するようにと」

 それはそうよね。

 聖力使いなんかが出てきたら問題しかないような気がする。

 聖女であるレイナ自らが自分を迷惑者(トラブルメイカー)というよりは騒動吸引者(トラブルアトラクター)だと思っているくらいで。

 出来れば騒動とは無縁でいたいのに。

「始祖さんはミルガンテの者が現れたらどうしろと?」

 シンがしゃあしゃあと聞いた。

 肝が太い。

「接触は慎重に。

 ですが無視しても敵対しても問題なので、出来れば相手のことを調査して望まれれば便宜を図るようにと。

 利用しようなどとは決して考えるな、というものでございます」

「あー、その始祖さんは判ってますね。

 確かにミルガンテに対するスタンスとしてはそれで申し分が無い」

「ありがとうございます」

 シンとタイロン氏が頷き合う。

 え?

 何かいつの間にか合意したみたいになっているけど?

 するとシンが言った。

「レイナ。

 これから面倒くさい話になるからちょっと出てくれない?」

「えー」

「そうですな。

 レスリー、レイナ様をご案内してレストランでお茶でも飲んでなさい。

 スイーツも頼んで良いから」

 何じゃそりゃ。

 呆気にとられているレイナを置いてけぼりにして、レスリーは素直に「はい」と答えて立ち上がるとレイナの手を引いて部屋を出た。

 レイナとしては何がなんだか判らないが騒ぐのも拙い気がしてついていくしかない。

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