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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第三章 聖女、学校に行く

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38.職場には友達いないの?

 そういうサリは3年生だ。

 高認は受かっているのだが、まだ日本語が怪しいのでもう1年修行するという。

「大学の受験資格があるのに中学で修行って」

「だから私の場合、日本語の現代文が難しいんだって。

 どっかの大学には入れるだろうけど、今のままだと講義についていけそうにもないから。

 かといって英語が得意なわけでもないから外国の大学にも行けないし」

 なるほど。

 ちなみにナオは卒業というか修了した。

 高認も受かっているし、そのまま大学に行くのかと思ったら専門学校に進むという。

「何で?」

「普通の大学に行ったら私、多分浮くと思うのよね」

 久しぶりにみんなで集まったファミレスでナオが教えてくれた。

「まあ、一流のクラブの現役ホステスだもんな」

「そんなのが同級生にいたら学生はたまったもんじゃないのは判る」

 確かにナオはレイナから観ても垢抜けた美人だ。

 とても一般学生には見えない。

 夜間中学の時は敢えて地味な格好をしていたらしいが、こうやって昼間に会うと圧巻だ。

「ねえ。その色っぽさってわざと?」

 たまりかねてリンが聞いたら困った顔をされた。

「わざというか。

 これが素なんだけど」

 さいですか。

 何というか素人離れした雰囲気だった。

 美人であることは確かなのだが、それはいわゆるアイドルやモデルとは90度くらい違う角度のそれだ。

 レイナにも判るくらいその業界の玄人(プロ)のイメージが凄い。

 納得した。

「これからどうするの?」

 サリが聞くとナオは頷いた。

「まだ迷っているけど、実は将来的には水商売じゃない仕事をしたいと思って。

 私、自分で何かやるより誰かのサポートをするのが向いているのよ。

 対人関係はどちらかというと苦手」

「そんなんでよくホステスなんかやってられたわね」

「計算と演技でどうにでもなるから」

 それからナオは真剣な目で言った。

「私は卒業しちゃったけれど、それからもみんなとは付き合っていきたい。

 お友達として」

「それはもちろん」

「ていうか友達止める気だったの?」

「私もいい」

「良かった」

 見るからにほっとするナオ。

 思ったより緊張していたみたいだ。

 そうか。

 こんな格好で来たのもありのままの自分を晒したかったからか。

 夜間中学では隠していたみたいだし。

 それでも良いと言ってくれる友達が欲しかったのだろうな。

「職場には友達いないの?」

 リンがズバッと聞いた。

 空気が読めない性格はこういう時に役に立つ。

「いない。

 クラブのホステスって従業員というよりは個人事業主だから。

 みんなライバルというか競争相手ね」

「そうなの」

「だから弱みは見せられないし、うっかり信用したりしたら何をされるか判らない。

 嵌められて消えていく人が途切れないくらいで」

 恐ろしい職場だ。

 だがレイナにはよく判った。

 ミルガンテ大聖殿も同じだった。

 聖女候補ということで一応は尊重されていたが、そんなレイナに取り入ろうとか受け入れさせて操ろうとかの思惑が見え見えの人が絶えず構ってきた。

 下手をすると侍女や護衛騎士まで敵にまわりかねないのだからきつい。

 よく爆発しなかったものだ。

「そういうことでよろしく」

「じゃあ月に一度くらいはみんなで集まらない?」

「賛成」

 お互いにスマホを出してその場で専用のグループが作られた。

 友達、ゲットか。

 今更だけど。

 ちなみにレイナの場合、夜間中学ではこの3人以外の友達は出来なかった。

 もちろん毎日同じ教室で勉強しているんだから同級生たちとは挨拶くらいはするし、演習や体育の授業では会話も交わすけどそれだけだ。

 実を言えばこれはレイナだけの責任ではない。

 もともとナオたち3人は夜間中学のクラスでは浮いていた。

 3人ともそれなりの美少女や美女で、しかも環境が重い。

 普通の生徒が声を掛けにくい雰囲気があった。

 だからこそ3人で固まっていたところにレイナが登場して仲間になった。

 庶民とはかけ離れた雰囲気の外国人の美少女が加わったことで、レイナたちは更に不可触(アンタッチャブル)な存在になってしまった。

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― 新着の感想 ―
身に付ける専門性によっては、 専門学校卒業後に大学に三年時編入できますね
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