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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第三章 聖女、学校に行く

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幕間7

 漆原清人はフラフラになりながら橋を渡っていた。

 残業して何とか明日の会議の資料を作り終えた時には既に日が変わっていた。

 当然、終電も終わっている。

 会社の近くにはホテルやネットカフェなどはない。

 あったとしても、明日というか本日朝からの会議に草臥れた背広姿で出席したくはない。

 清人は下っ端とはいえ、明日の会議で顧客に向けて提案(プレゼン)しなければならない。

 少なくともシャワーは浴びてクリーニング済みの服を着ないと上司に後で怒られそうだ。

 寝静まった通りを歩いても人っ子一人いない。

 幸いにして清人のアパートは遠くない。

 せいぜい2駅というところか。

 タクシーを呼ぼうとして思いとどまる。

 必要経費にはつけられない。

 30分も歩けば帰宅出来るし、数時間は寝られるだろう。

 というわけでテクテク歩いてここまで来たのだが。

 舐めていた。

 入社以来、デスクワークしかやってない清人である。

 一日中仕事して、その後に歩くって正気か。

 よく考えたら夕食を食い損ねている。

 途中にコンビニもない。

 アパートに戻ったらカップラーメンだ。

 そんな思考で一杯になった清人は、突然何かよく判らない凄まじい響きに打たれて硬直した。

 足がもつれて尻餅をついてしまう。

 車も通らない橋の上で清人一人が呆然と座り込んでいる状況だ。

 何か、物理的な圧力すら伴った圧倒的な音、いや叫びが響く。

 どこの国の言葉とも判らない、しかし圧倒的な威厳と威嚇に満ちた響きだ。

 これ、歌か?

 そろそろ起き上がって手すりから下を覗いてみたが、真っ暗で何も見えない。

 咆吼は近くにある鉄道橋の下にいる何かが発しているようだ。

 と、その響きが唐突に止んだかと思うと今度は日本語の歌が聞こえてきた。

 あまりにも響き渡るので歌詞がよく聞き取れないが、明らかに日本語の単語と思われる言葉がところどころに散見される。

 アカペラらしくて楽器演奏は聞こえなかった。

 誰かが歌の練習でもしているのか。

 それにしても凄い声量だ。

 好奇心が頭をもたげたが、それよりは明日の会議が大事。

 聞かなかったことにしよう。

 肩を竦めて歩き出す清人の背中を圧力すら伴った声が叩く。

 凄い奴もいるものだ。

 プロの歌手、いやひょっとしたらオペラの歌い手なのかもしれない。

 こんな夜中に練習しているのか。

 確かに、あの声量では日中に街中で歌ったら通報されて警察が来るかもしれない。

 それにしてもでかいだけで綺麗だとか美しいとかは思えない歌声だが、色々あるのだろう。

 頑張れ、誰か知らんが歌手の人。

 気を取り直した清人はシャワーとベッドと何よりカップラーメンが待つ自宅へ急ぐのであった。

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