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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第三章 聖女、学校に行く

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31.そんな国あったっけ

 言われて見たらナオは垢抜けているというか、もの凄く「大人」という印象だった。

 目を引く美人ではないが落ち着いていて知的だ。

 テレビのドラマに出てくる有能な女性社員のようだ。

 何で夜間中学に通っているのか判らないくらいだ。

「中学校くらいは出たくて」

「そんなこと言ってるけどナオってもう高認受かってるんだぜ」

 隣塚燐(リン)が口を挟んだ。

「ナオはメッチャ頭がいいんだ。

 こないだ知能(IQ)テスト受けさせられたら130越えてて」

「でも集団行動の経験ってほとんどないの。

 だから」

 色々事情があるものだ。

 あれ?

「なぜ夜間なの?」

 昼間の学校でも良いのでは。

「さすがに普通の中学校は恥ずかしいから。

 高校は中学卒業資格がないと入れないし」

 それはそうか。

 ナオが教えてくれたが、高認は高校卒業というか大学の受験資格が貰える「だけ」だそうだ。

 だから持っていても義務教育ではない高校には入れない。

「中学卒業資格って簡単にとれそうだけど」

「それもそうだけど、この歳で昼間の高校に行っても浮くだけでしょう。

 夜間高校は意味がないし」

 水商売で生活出来るほどの女性が普通の高校生に交じっても違和感バリバリ。

 しかも卒業してもメリットがない。

「だからこうやってみんなと一緒に給食食べたりする事がむしろ目的というか」

「私は逆。

 小学校からイジメで不登校。気がついたら15歳過ぎていて」

 隣塚燐(リン)が情けなさそうに言った。

「中学卒業にしてやると言われたけど学力が全然追いついてなくて。

 高校に進学するか、高認取るために基礎からやり直している。

 正直先は遠い」

「まあ確かに」

「気を強く持て」

「またみんないい加減な事を!」

 気安く笑い合うみんな。

 良かった、いい人たちばかりで。

「で、玲奈だったっけ?

 アンタは何で夜間中学(ここ)に来たの?

 ていうかどういう状況?」

「言いたくないのなら聞かないけど」

 いや聞いてるでしょ(笑)。

 ビーフシチューを食べ終わってみんなでお茶を飲む。

 まだ少し時間があるようだ。

 シンと打ち合わせておいた通りに話す。

「私は日本出身ではないです。

 今は同郷の者の世話になっています。

 日本語は勉強中だけど、それ以外の日本の知識もゼロなので、とりあえず夜間中学で勉強します」

「それにしては日本語上手いね」

「アニメで覚えました。

 だから読み書きは全然です」

「ああ、そういう外国人は多いですね」

「アニメは国際共通語だからな」

「じゃあ英語とかペラペラ?」

「まったくです。

 母国語は英語ではないです」

 ミルガンテ語で適当に話すとポカンとした顔をされた。

「全然判らない」

「不思議な響きね。

 東南アジア、いえ中東かしら」

「私達はミルガンテと呼んでいますが」

「そんな国あったっけ」

「国連には加盟してません」

 くり返すが嘘は言っていない。

 話している内にチャイムが鳴ったので食堂を後にする。

 最後尾を歩いているとナオがこっそり話しかけてきた。

「ひょっとして玲奈さんって凄いお嬢様なんじゃない?」

「違います。

 なぜそのように思うんですか?」

「動作が綺麗で上品だし、自分では気づいてないかもしれないけど後光(ハロー)が半端ないよ?

 ひょっとして亡命とかしてきた?」

「違います」

 どちらかと言えば事故だ。

 まあ、確かに機会があれば亡命というよりは逃走したかったことは確かだが。

 でもそんなことを実行したらいずれは追い詰められて殺される。

 あのままだったら一生奴隷だった。

 シンが逃げたのも無理はない。

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