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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十四章 聖女、社会の真実を知る

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188.ああいう人達って本当にいるの?

「そういう人って公的な機関に所属したり出来ないからね。

 レイナは僕の会社の社員でもないから怪しさ爆発」

「それは酷い」

「だから日本の夜間中学を卒業して高認取って大学に進学する準備をしている、という事実は大きいんだよ。

 ハンデはあるけど努力して同化しようとしている証拠になるし。

 そこで一応は身分が確定する」

 あれ?

 だったらもっと簡単な方法がありそうな。

「私もシンの会社に入ればいいのでは」

「何の仕事するの?

 言っとくけどナンバーズの番号揃えたりするのは駄目だからね。

 そんなの(おおやけ)に出来ないし誰も信じない。

 何もしないのに給料貰っているって愛人でしかないでしょ」

 そうなるのか。

「リンは?」

「ナオさんの判断に任せたけど、正式に雇ったわけじゃないから。

 臨時にバイトとして使うだけでは身分証明にならない」

 それにリンさんは日本人だし自分の親がいるから今更身分を保障する必要ってないし、とシン。

 なるほど。

 そういえばレスリーもきちんと両親がいて立場がはっきりしている。

 レイナとは違う。

「ま、本当言えばお金があればどうにでもなるんだけどね」

 シンが真逆のことを言い出した。

「そうなの?」

「うん。

 僕も詳しくは知らないんだけど、コミックやドラマによく出てくるでしょ。

 お金持ちの娘さんが働きもしないで贅沢に暮らしていたり遊び回っていたりという」

「あるね」

 レイナはあまり読んでいないのだが、コミックの中でも女性読者層を対象にした話にそういうものが多かった。

 レディスコミックというらしい。

 主人公は女性。

 ちなみにこれは少女漫画とはまた別のカテゴリーで、登場人物(キャラ)は大抵成人していてサラリーマンだったり大学生だったりする。

「ああいう人達って本当にいるの?」

「いるんじゃない?

 よく知らないけど」

「そういえばシンみたいな人が主人公のお相手役で出てきた気がする。

 まだ若くてお金持ちの起業家とか」

 イケメンで、と言いかけて自重した。

 レイナからみたらシンも結構なイケメンだが、それを言ったらかえって侮辱になってしまう気がする。

「まあ、僕も若い方か」

「シンって三十歳くらいなんでしょう?

 それくらいの歳で自分で作った会社の社長って十分ヒーロー役が務まりそう」

 ただ、シンはやりたくないだろうなとレイナは思う。

 何冊か読んだだけだが、そこに出てくるヒロインの相手役の男は大抵、いつ仕事しているのか判らないくらい毎日ヒロインと会って口説いていたような。

 それでいて肩書きが会社の部長だとかコンサルタントとか起業家とかって無理がある。

「コミックにリアリティを求めても無意味だよ。

 ていうかそういう漫画もあるけどジャンルがまったく違うから」

「それは何となく判る」

 レイナも漫画喫茶で色々なコミックを読んでいる。

 今のところは全方位に興味があるので手当たり次第に手に取っているが、中には劇画という画風が他の(コミック)とは全然違う漫画もあった。

 むしろ醜いと言えそうなキャラが下品なことをしたり、画面全体が汚かったりしてレイナの好みではないのですぐに撤退した。

 それよりはマシだけど、年配の男性キャラが延々と話し続けているようなものもあって、何が面白いのかさっぱりだった。

 コミックに詳しいはずのレスリーに聞いても「私には関係の無い分野ですね」というだけだし、リンは存在すら知らなかった。

 サリに聞いてやっとそれがいわゆる「サラリーマン漫画」という分野だと知ったのだが、どうも想像していたものとは違う。

 サラリーマンって労働者ではなかったのか。

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