181.私はどっちでもいい
ふうん、と言いながら背中を背もたれに預けるシン。
そしてナオに聞いた。
「使えそう?」
「私のところではまだ。
サリは?」
「そうですね。
正規雇用は無理でしょう。
今のところ、やって貰う仕事がない。
ですが」
リンを睨みながら言った。
「バイトなら。
私の補助くらいなら出来るかもしれません」
「そうか」
シンが頷く。
そして言った。
「ということだ。
隣塚燐さん。
我が社の人事権はナオさんが持っている。
入社したいのならナオさんを説得して」
「判りました」
へえ。
シンってナオをそこまで信用しているわけね。
というよりは面倒くさいことを丸投げしたのかもしれないけど。
面接はそれで終わりだった。
その後、シンは「後は任せた」と言って出て行ってしまった。
若い者? 同士で話し合えということだろうか。
まあ、確かにシンがいたら雑談なんか出来そうにないけど。
それよりシンはリンに「ナオを説得しろ」と言ったわけだ。
これは別にナオさえ納得したら良いということではなく、レスリーは別としてサリやレイナがうんと言わなければ駄目だということだろう。
シンの会社に入るということは、それだけ「重い」ことなんだな。
レイナ自身は別にシンの会社に入りたいとか思ってないのでどうでもいい。
もっと面倒な状況に既に踏み込んでいるから、そんな些細なことに構っている暇はない。
冷たいようだがリンの問題であってレイナは関係ない。
「私はどっちでもいい」
ナオに言っておいた。
「そんなあ」
途端に情けない声で泣き言を言うリン。
自分の就職でしょ。
責任くらい自分で取れって。
「反対されないだけでも凄い好意だぞ?」
サリが背もたれに寄りかかりながら言った。
「正直言ってシンさんの態度は意外だった。
てっきり断っておしまいだと思っていたんだが」
「そうですね。
正直、現時点でのリンさんを雇う理由が見当たりません」
サリもレスリーも冷たいというか現実的だ。
まだリンの試練は続いているみたい。
「ナオは?」
沈黙を守っているので聞いてみた。
「うーん。
みんなに言う通り、今のリンでは使い物にならないのよねえ。
お友達ならともかく仕事仲間としては」
「ま、どっちにしてもリンはまだ未成年だろう。
学歴も現時点では中卒、いや小学校中退だしな。
よくそれで雇って貰おうなどと言えたものだ」
サリが情け容赦なく踏みつける。
厳しい。
事実なだけに反論しようがない。
泣きそうになっているリンを見ながらレスリーがふと思いついたように言った。
「……ひょっとして、そういうお役目なら」
「何か思いついたか?」
「はい。
ナオさんが言ったようにお友達くらいしか取り柄がないのでしたら、お友達枠というのはどうでしょうか」
リンを含めた全員が絶句した。
何それ?




