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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十四章 聖女、社会の真実を知る

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177.お待たせ

 そもそもミルガンテ、特に大聖殿では聖力が全ての基準なので、そこにいる人がどんな容貌だったとしても大した話題にもならない。

 これは上は大神官や聖女から下は護衛兵や侍女まで全員である。

 さすがに聖力持ちでは無い下働きの者たちは違うが。

 ちなみにいくら聖力が膨大でも自分の容貌が気にくわないからといって変えることは出来ない。

 というか出来ないこともないが、しばらくすると元に戻ってしまう。

 これは人体が魂の具現化であるためで、器は魂に合った様相をとるからだ。

 シンが言ったように魂の中には人体の設計図が内包されている。

 ええとDNAとかいったっけ。

 だからレイナは魂だけの状態から聖力のみを使って自分の身体を創造出来たわけで。

 一瞬、意識が飛んだレイナだったがスマホが振動していることに気がついた。

 電話だ。

「はい」

『僕だけど』

「ああ、シン。

 何?」

『今調べたらレイナ達がいるファミレスってもうすぐ閉店だよ。

 もうちょっとかかるから店の前で待ってて』

 ありゃ。

 そういえばさっきから店員がちらちらこっちを伺っている。

 出ていけとは言いにくいよね。

「判った」

『それじゃ』

 スマホの通話を切るとレスリーも頷いた。

 気がついていたらしい。

 リンが戻って来たのでみんなで店を出る。

「ありがとうございました」

 店員がほっとした表情を見せた。

 閉店時刻になっても居座る客がいるのかもしれない。

 外はまだ寒かった。

 そういえばまだ春になってない。

 レイナ自身は聖力で暖まれるが、みんなに悪いので我慢する。

 固まって震えていたら黒塗りの大きな車が音もなくすーっと近寄って来て停車した。

 長いとかではなくて幅広で厳つくて箱形だ。

 確かワゴンとかいうタイプの車じゃなかったか。

 タイロン氏たちと会った時に乗ったリムジンとはまた別の意味で、そこら辺を走っている軽自動車とは別物に見えるくらい車体が重厚で大きい。

「お待たせ」

 車が大型なのに反して気軽な言葉をかけてきたのはシンだった。

 後部座席の窓を開けて手招きする。

「この車なら全員乗れるから」

 ドアがスライドすると運転席の後ろに座席が2列並んでいた。

 ハンドルを握っているのはサリだ。

 ナオは助手席。

 オールスターか。

 レイナ以外の2人が最後部座席に並んで座り、レイナは最後にシンの隣に腰掛ける。

 ドアを閉めると車はスルスルと走り出した。

「この車は?」

「社用車かな。

 あると何かと便利なんだよ。

 人も運べるし荷物も積めるし」

 そうなの。

 何となく誤魔化されている気になったがどうでもいい。

「どこに行くの?」

「うちの会社でもいいかと思ったんだけど、どうせならみんなで食事でもと。

 みんなはもう夕食食べたんだよね?」

 これはレイナたち夜間中学組にかけた言葉だろう。

 給食が出ることはシンも知っているはずだ。

「食べたけど大丈夫」

 そろそろお腹が減ってきた。

「私も」

「行けます」

 レイリーとリンも異論はないようだった。

 というよりは断れないよね。

「よし。

 サリさんよろしく」

「かしこまりました」

 サリはシンの部下になりきっていた。

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