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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十三章 聖女、歴史を学ぶ

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170.ご命令、承りました

 そういうことか。

 ナオは接客のプロだから秘書として外部からのアクセスを処理する。

 サリはその得体の知れない技能を駆使して情報を収集すると。

「いやー、最初はこんなに若いお嬢さん達を雇っていいのかと思ったんだけどね。

 断ろうとしたら裏の仕事も引き受けると言われて」

 シンがため息をついた。

 裏って?

「レイナのことだよ」

 サリが得意げに言った。

「もちろんシンさんがメインで対処するだろうけど、雑事は誰かに任せた方がいいだろう?

 ならばレイナと親しくて信用がおける我々がサポートしますということで」

「もちろん立場は弁えます」

 ナオが屈託なく言った。

「レイナがお嬢様なのは設定だけじゃないことは判っているから。

 というよりは王女様?」

「いや。

 聖女様だろ」

 ニタリと笑うサリ。

 本当に得体が知れない女だ。

 どこまで気づいているのか。

「とまあ、ここまで知られているんだったら身内にしてしまった方が安心出来ると思ってね。

 二人とも来て貰うことにした」

 シンがまとめた。

 なるほど。

 まだよく判らない所はあるが、とりあえずは納得出来た。

「するとナオとサリはもう学校とか行かないの?」

 聞いてみたらシンが言った。

「我が社の精鋭社員が低学歴というのは外聞が悪いからね。

 二人とも最低でも大学卒の資格を取って貰う」

「何と社員の福利厚生で大学の学費を出して貰えるんだ!」

 サリが興奮して言った。

「だから私も4月から大学生だ!」

「さすがに普通の大学に行きながらフルタイムの社員は出来ないので。

 私たちは通信大学生ですけれどね」

 さいですか。

 シンは随分甘い、じゃなくて社員掌握が上手のようだ。

 そんなことされたら絶対に裏切れないではないか。

 ナオやサリはそこまで期待していたんだろうか?

 まあいいけど。

「ということで二人は僕の部下ということになった。

 もちろんレイナとの関係はそのままだけど」

 シンが言ったけどサリが否定した。

「レイナが何か秘密を抱えていることは判っているんだよ。

 でも私達は踏み込まないから。

 あくまで雑事の処理」

「本当なら『お嬢様』と呼びたいのだけれど嫌でしょう?

 だからお友達ということで」

 うーん。

 シンを見たら頷いてくれたので応える。

「私にも言えないことは色々あるから。

 というよりは下手に知ったら大事(おおごと)に巻き込まれかねない」

「だから二人には後方支援に徹して貰う事にしたんだ」

 シンが引き取った。

「具体的には僕がいない間にも会社の業務をやってもらう。

 ナオさんにはある程度の決裁権限を持って貰って」

「頑張ります」

 ナオが厳かに言った。

 凄い。

「サリさんはナオさんの指示に従ってね」

「ご命令、承りました」

 こっちも芝居がかっている。

 もっとも二人とも本気だ。

 単なる就職のつもりではないだろうな。

 何せ身近でレイナの異常性を見続けてきたわけで。

 覚悟がないとやっていけまい。

「ということなんだけど、他には何か聞く事ある?」

 シンに言われて気がついた。

 もうナオもサリも身内なんだから情報共有しておいた方がいいかも。

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