163.あー、それはそうよね
授業は自習だった。
リンはすぐに数学の練習問題に没頭したためレスリーと話す。
「何か動きはあった?」
「ないです。
私に連絡が来るのは最後なので」
下っ端だから。
「ところでレスリーって英国の歴史に詳しい?」
「それは母国ですから人並みには。
でもあやふやですよ?」
レスリーの場合、国籍は英国でも実のところ母国で過ごした期間はそんなに長くないそうだ。
両親が頻繁に海外赴任するので一緒に数カ国に住んだことがあるらしい。
「色々な国の言葉を話せるの?」
「英語と日本語はネイティヴ並ですが、その他は全然です。
日本以外は英語圏の国で英語が話せれば不自由なかったので」
敢えて他の国の言葉を覚える必要がなかったらしい。
「それに」
「それに?」
「ヲタク活動が忙しくなってきて学校の勉強とアニメ視聴だけで時間が潰れてしまって」
真性のヲタクだったか。
「でも私のルーツは日本です!
魂の故郷ということで」
そうなのか。
変な奴であるということは判った。
「じゃあ英国には詳しくない?」
「それは母国ですから人並みには知ってますよ。
でも昔の事はあまり詳しくないです。
歴代の王様の名前もわからないくらいで」
「それはどうかな」
「日本人だって歴代の天皇陛下の名前って覚えてないでしょぅ。
そんなものです」
それもそうかも。
レイナもミルガンテの大聖殿では色々と教わったけど、王国の歴史とか王様の名前なんかは知らなかった。
というよりは教えられても忘れた。
学者でも無い限り、そんなに細かい所まで知っている人はいないそうだ。
「あー、それはそうよね」
突然リンが割り込んできた。
「勉強はいいの?」
「一区切りついたから気分転換」
さいですか。
「天皇陛下はもちろん、総理大臣の名前だって知らないものね、あたしは」
「それは自慢?」
「じゃないけど、一般庶民ってそんなものだから」
そうなんだろうな。
考えてみたらミルガンテでも庶民はそんなものだろう。
領主様の名前すらあやふやだ。
なぜかというと覚える必要が無いから。
自分に直接関係してこない知識はスルーして当たり前だ。
「ところで何の話してたの?」
リンが居座った。
「英国の歴史についてちょっと」
「あ、そういえばレスリーってイギリス人だったっけ」
そこからかよ。
「当たり前に日本語話しているから忘れていた」
「どうみても日本人じゃないでしょ」
「レイナだって日本語ペラペラじゃない。
最初はラノベのヒロインかと思ったけど慣れた」
そうなのか。
「あ、それは私も思いました」
レスリーがポンと手を打った。
「ラノベのヒロインって時々変な属性の人がなるじゃないですか。
日本人なのに金髪に青い目とか」
「あるある」
「祖母が外国人だったとかで説明してますけれど、金髪って劣性遺伝子だから混血したら滅多に出ないんですよ。
特に英国人。
コミックに出てくる人って大抵は金髪碧眼なんですよね。
英国にもそんな人、滅多にいないです」
レスリーが言い切った。
そういえば本人は碧眼ではあるが髪は茶色に近い。




