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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十一章 聖女、移動手段を確保する

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139.あれって免許とかいるのでは

 このチェーン店の料金体系は長時間ならパック料金になるそうだ。

 この間は夜間8時間だったが、はっと気づいた時には既に夜が明けていた。

 計算してみたら、中途半端に出るよりはもっと長時間パックの方が安かった。

 なのでレイナは更に粘ることに。

 コミックを何十冊も続けて読んでいるとさすがにお腹が空いてきた。

 もう弁当やお菓子は食い尽くしている。

 ふと部屋に備え付けのメニューを見たら食事が注文出来る時刻を過ぎていたので画面から注文(オーダー)する。

 店長お勧めとやらのエビピラフは美味しかった。

 というかファミリーレストラン並だった。

 こんな店でも食事には手を抜かないとは。

 ミルガンテと比べるどころではない。

 絶対に戻らないぞと何度目か判らない覚悟を心に刻む。

 結局、12時間パック料金のギリギリまで粘ってお店を出た頃にはもうお昼が近かった。

 堪能した。

 もう当分コミックなんか読まないでも良いと思っていたのだが、自分の家に戻ってお風呂に入ってくつろいでいると、また行きたくなってきた。

 ちょうどシンから電話がかかってきたので出る。

『どうだった?』

 お見通しらしい。

「近くのお店。

 ちょっと遠かったけど」

『走って行ったのか。

 まあレイナなら平気だろうけど』

「帰りはジロジロ見られた」

『昼間だとね。

 そうだレイナ。

 自転車の練習しない?』

 唐突に言われて一瞬、言葉に詰まる。

「自転車って」

『歩き回るより格段に行動範囲が広がるよ。

 バイクや車はまだ早いと思うから、とりあえず』

 そういえばアニメやコミックにも時々出てくる。

 通学に使ったり、ちょっとした買物とか。

 ハンドルに籠がついていて荷物も積める。

 アベックで河原の土手の上の道を一緒に走るという伝説もあったような。

 いいかも。

「あれって免許とかいるのでは」

『今のところはいらないね。

 ただヘルメットを被るとか色々と規則はあるけど』

「でも私に乗れるのかな」

 するとシンはちょっと笑ったようだった。

『練習すればいいんだよ。

 やり方はネットで調べて見て。

 あ、自転車の購入も自分でやってみるとか』

「いいのかな」

『何事も経験だし』

 さいですか。

 シンはどうもレイナを鍛えたいようだ。

 でも確かに自転車に乗れるようになれば、あのお店に行くのも楽になりそう。

 あそこはちょっと狭かったから、前に行った街道沿いの広い所にも行けるかも。

 レイナは早速ネットで自転車について調べてみた。

 色々な種類があるようだ。

 一番ポピュラーなタイプはママチャリといって、要するに女性でも乗りこなせるような廉価版の物らしい。

 驚くほど安い。

 一方、高い方は青天井で値段が跳ね上がる。

 チタン製だとか色々あるのだが、もっと調べたら競技用だった。

 そういえば自転車競技のコミックも読んだことがあった。

 何と、日本にはプロの競輪もあるらしい。

 何という複雑な世界なのか。

 ミルガンテでは考えられない。

 ついでに調べて見たら、自転車だけじゃなくて馬とかボートとかバイクとかの競技もあった。

 しかもそれってスポーツではなくて賭事だ。

 まったく知らない世界だった。

 気にはなるが、とりあえず封印して自転車のことをもっと詳しく調べる。

 自転車屋というか自転車を販売しているお店はたくさんあって、レイナのマンションのすぐそばにも一軒見つけた。

 とりあえず出かけてみることにする。

 歩いて数分の所にそのお店があった。

 店の前にずらっと自転車が並んでいて圧倒される。

 こんなに?

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