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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第九章 聖女、悪い遊びを覚える

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124.そんなことも出来るの

「あと、カラオケと一緒でお腹が空いたら食事を注文出来ますよ。

 ファミレスレベルですがちゃんとしたお料理が出ます」

 至れり尽くせりだった。

 ミルガンテの人が観たら天国かと思うだろうな。

 とりあえず飲み物を持って部屋に戻り、改めてコミックが並んでいる部屋に引き返してパソコンで選ぼうとしてやり方が判らないことに気がついた。

 聞きに戻るのも面倒だ。

 なので新刊が並んでいる棚から選ぶ事にする。

 なぜかやたらに異世界物が多かった。

 レイナはあまり好きではないのだが。

 ついミルガンテを思い出してしまって嫌な気分になるので。

 とりあえず漫画雑誌に載っていて気になったコミックの新刊を5冊ほど選ぶ。

 勝手に持っていっていいのかと思って通りがかった店員らしい制服を着た人に聞いたら、持ち出し自由で読み終わったコミックは返却棚に返しておけばいいと言われた。

 元の場所に戻す必要もないのか。

 部屋に戻るとサリが居なくなっていて、リンとレスリーが大騒ぎしながらゲームをやっていた。

「そこ!

 罠があるって」

「こうですか?」

「うん、上手い。

 アイテムに頼らずに避けるのが一番だから。

 もっとヤバい場所があるから温存しておいて」

 楽しそうだな。

 レイナは二人からなるべく離れた席に腰掛けるとコミックを読み始めた。

 持ってきた中の一冊が面白かった。

 スポーツ物の少年漫画で、主人公やライバル達が色々な技を駆使して戦っている。

 とても普通のスポーツとは思えないような激しい戦い方で、みんな聖力持ちなのかと思った。

 3メートルくらい飛び上がってボールを蹴ったり空中で回転しながらドリブルしたりしている。

 こういう台詞があまりない漫画は判りやすい。

 しかも登場人物が少ないというか、大抵の画面では2人か3人しか出てこない。

 キャラもみんな特徴があって区別しやすい。

 話も判りやすいというかストーリー的にはほとんど進んでいないのだが。

 試合しているだけだし。

 あっという間に読み終わってしまった。

 続きが気になったがこれは最新刊だ。

 ならばここに至るまでの過程が知りたいと思ったが、どこに置いてあるのか判らない。

 ふと気づくとサリが戻って来ていた。

 何か全身が紅潮しているような。

「シャワー浴びてきた。

 予約が入ってなくて運が良かった」

「そんなことも出来るの」

「しかも無料だぞ。

 お前らも入ってくると良い」

 それもいいけど今はコミックが気になる。

 サリもコミックにはあまり詳しくないというので、レイナは該当本を持っていってPCの前に通りがかった店員さんに検索して貰った。

「ここです」

 何列も並んだ本棚の真ん中辺りにそのコミックはあった。

 でも。

「これって」

「人気漫画ですから。

 最新刊は34巻ですね」

 さいですか。

 そんなに続いていたのか。

 ていうか主人公、まだ高校生よね?

 そこで前にシンが言ったことを思い出した。

 漫画は果てしなく時間を引き延ばせる。

 週刊誌に載った16ページでボールを一回投げて終わったり、一試合に半年かかったり。

 これってそういう世界なのか。

 どっと疲れた気がしたが、よく考えたら別に急いでいない。

 ならばチャレンジしてみるのもいいかも。

 レイナはとりあえず初巻から10冊ほど取り出して抱えたまま部屋に戻った。

 両手が塞がっているので使用者証が使いづらかった。

「お。

 レイナもここの使い方が判ってきたな」

 サリに言われたけど無視。

 自分の席に戻ってコーヒーカップが空になっていることに気づいてドリンクバーへ。

 そういえばドリンクだけなのかと思ってみたら、なんとスープやソフトクリームまであった。

 固形物は有料らしい。

 店員に聞いてみる。

「あの、これって」

「全部無料で飲み食べ放題です」

 信じられない。

 レスリーが「聖地」と言った意味が判った気がする。

 ガラスカップにアイスクリームを盛り、ついでにポタージュスープをカップに注いで部屋に戻る。

「あ、レイナ!

 何とってきたの?」

「ソフトクリームとスープ」

「そんなのあるんだ!」

「色々とありますよ。

 炭酸系も充実しています」

 レスリーは本当にブレない。

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