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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第八章 聖女、大人になる

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121.ところで何の話だったっけ

「ないけど」

 あっさり応えるレイナにリンは「あちゃー」と目を覆って見せた。

「レイナって箱入りどころじゃないね。

 どういう育ち方したの?」

「どういうって」

 ミルガンテの大聖殿で聖女候補として育ちましたが何か。

 とは言えないので沈黙する。

 レスリーの合図があったのか、リンが失敗(しま)ったという表情で露骨に話題を変えた。

「とにかくそういう詐欺にひっかかる人がいるということは確かよ。

 周りが気づかないうちにやられたり、止めても止まらなかったりして」

「個人の自由です」

 レスリーは冷たかった。

「人に迷惑をかけない限り、個人の自由は最大限尊重されるべきです」

「それがロマンス詐欺にひっかかることでも?」

「欺されたと気づくまでは甘い夢を観られたんだから良いのでは」

 鬼畜だった。

 まあいい。

 少なくともレイナ自身には関係なさそうだ。

「ところで何の話だったっけ」

「さあ?」

「この話はもういい。

 ところでみんなはこれからどうするの?」

 いい機会だから聞いてみる。

「これからって?」

「例えば来年度は?

 まだ夜間中学(ここ)にいる?」

 何気なく聞いたらリンが落ち込んだ。

「……私、丹下先生にそろそろ出て行ってくれって臭わされているのよね」

「そうなの!」

 何と。

 そういえばリンは3年生だった。

 夜間中学に学年はあまり関係ないが、さすがに何年も居続ける人は少ない。

 3年、長くても4年過ぎたら「卒業」になる。

 そもそも夜間中学の卒業証書など社会的にはほとんど意味がない。

 卒業して高校に進学する人ってあまりいないからだ。

 行くとしても通信教育やフリースクールで、そういった教育機関は中卒の資格をあまり重視しない。

 小学校から引きこもりで一日も通学していなくても卒業証書が貰えたりするから。

「でもリンって高校には行かないのよね?」

「18歳にもなって新入生はきついよ。

 在学中に成人式があるんだよ?」

「だとするとやっぱり大学ですか?」

「だから高認目指しているんだって!」

 なるほど。

「通信大学って高校出てないと行けないの?」

「それはそうよ。

 高校や大学は義務教育じゃないから、その前の教育課程を終えたという証明がないと入れてくれないどころか受験資格すらない」

 厳しい。

 だがレイナは何も言えない。

 高認受かってしまったから(泣)。

「レイナ……さんはどうしますか?」

 レスリーに言われて気がついた。

 そういえば最近、丹下先生から無言の圧力を感じる。

「私も追い出されると思う。

 大学に行くかなあ」

 言ってしまってからリンが絶望に染まっていることに気がついた。

「みんな私を置いて行くんだ。

 そして私はアラサーになっても高認を受け続けるんだ」

「さすがに諦めるんじゃないですか」

 レスリーが傷口に塩を擦り込む。

「中学校すら出ていない私にこれからの人生をどう生きろと?」

「学歴がなくても出来る仕事はあります」

「小学校中退で出来る仕事なんかないよ!」

 いや、ナオは一流クラブの売れっ子ホステスやってましたが。

「そこ!

 五月蠅いですよ!」

 丹下先生の割り込みが入って沈静したが、レイナにとっても後味が悪い事件だった。

 でも確かにこのままではリンが哀れだ。

 数日後、久しぶりに顔を出したサリに言ったら笑い飛ばされた。

「リンの奴、落ち込んでるのか」

「その言い方は酷くない?」

 サリはふふんと笑った。

「レイナは優しいな。

 というよりはまだ(リン)の本性を知らない。

 あいつはそんなに生やさしくないぞ。

 ある意味、私やナオなんかより強い」

「そうなの」

 とてもそうは見えないが。

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