119.私らはのけ者か
「あ、それいいですね!」
お調子者のリンがついうっかり言ってから身を竦める。
「そうする」
「それじゃ。
あ、ナオさんとサリさんはちょっと残って」
シンがさりげなく言うとナオとサリが頷いた。
レイナは怪訝な様子のレスリーとリンをせき立てて自分の部屋に戻る。
やっぱりナオとサリは特別みたい。
「大人」だからか。
まあいいけど。
「私らはのけ者か」
「未成年は責任を負えないんだから仕方がないです」
レスリーとリンが話すのを尻目にピザの宅配を頼む。
「飲み物はどうする?」
「冷蔵庫にある」
こんなこともあろうかと一通りの清涼飲料水は揃えてある。
レスリー用に炭酸もある。
リンとレスリーがリビングのテーブルにペットボトルを並べ、レイナがお湯を沸かしたところでピザが届いた。
「取ってくる」
「お願い」
レスリーも動こうとしたけど、ここはやはりリンがいいだろう。
外国人の美少女が出迎えたら宅配の人が驚くかもしれない。
「お金は?」
「払ってある」
注文するときに支払い済みだ。
もうすっかり慣れてしまったけど、ミルガンテと比べて便利なんてものじゃない。
絶対に戻らない。
リンが出ていくのと入れ替えにナオとサリが来た。
「何の話だったの?」
「まあ」
「ちょっとね」
言いたくないらしい。
まあいいけど。
リンがピザの箱をいくつも抱えて戻ったところでリビングに落ち着く。
それぞれ飲み物を準備して宴会? になった。
「喰いながらで良いから聞いてくれ」
サリが言った。
「まず、この件の対処は私らに一任させて貰った。
シンさんの手は借りない」
「「「「了解」」」」
「で、対処方法だが『あれはCGでした』で行こうと思う。
理想の貴族令嬢を作ってみたかったと言う事で」
あれが理想なんだろうか。
坐っていただけのレイナにはよく判らなかった。
「具体的には?」
「今ある素材をちょっとずつ劣化させて一連の流れを作る。
最初は駄目だったのを頑張って仕上げていったという証拠だな。
そして流失したのが最終形だと言い張る」
「なるほど」
「そんなこと出来るの?」
思わず聞いてしまった。
「写真をわざと下手に加工すればいいだけだ。
生成AIはどうしようもない画像にあちこち手を入れて作っていくものだからな。
それを偽装する」
「それは判ったけど……誰がやるの?」
そう、レイナたちの仲間にコンピュータのエンジニアはいない。
「私がやる」
サリがあっさり言った。
「出来るの?」
「バイトでちょっとやったことがある。
大した技術はないけど大丈夫だ」
「サリは何でも出来るのよ」
ナオが自慢そうに言った。
「伊達にバイト掛け持ちしてないから」
「いや何でもは出来ないぞ。
出来る事だけだ」
どっかで聞いたことがあるような台詞だった。
「私らは何をすれば?」
「画像が完成したら拡散してくれ。
裏垢は使うなよ。
捨て垢でやってくれ」
専門用語が出てきたのでレイナは撤退した。
どっちみちこの件では役に立ちそうにもない。
というよりは私って被害者よね?




