118.肝に銘じます
レイナはあまりピンとこなかったが他のみんなは意気消沈していた。
それほどのことなのか。
マンションに戻ってシンの部屋に行く。
シンが待っていた。
こういう時のためのソファーセットか。
アニメに出てくるみたいな長椅子や大きなテーブルがあって違和感しかなかったのだが、やっと判った。
6人いても余裕で座れる。
「夜遅くご免ね」
「いえ、私達の不手際ですから」
ナオが代表して頭を下げる。
「まあ、落ち着こうよ。
レイナ、飲み物を」
「判った」
「あ、お手伝いします」
レスリーが飛び上がるように立つ。
希望を聞いたらレスリー以外は全員コーヒーだった。
レスリーは炭酸を希望した。
ブレないな。
レイナが全員分の飲み物を用意してレスリーが配膳して着席。
「それじゃ。
経緯を聞こうか」
シンが言ってサリがファミレスでの話を詳細に語る。
「データは全部流失したの?」
「いえ、数枚です。
妹の奴は『イイネ!』が欲しかっただけみたいで、問い詰めたら残りは後でアップするつもりだったと」
「不幸中の幸いかな。
対処としては?」
「とりあえず妹のアカウントは消させました。
でも画像は拡散してしまっていて」
そうだろうな。
SNSとはそういうものだとレイナも知っている。
デジタルデータは簡単にコピーできるし著作権なんか無視して使われる。
「うん、大体判った。
今更言うまでも無いと思うけど、これからは気をつけてね」
「肝に銘じます」
サリが深く頭を下げた。
残りの全員も続く。
連帯責任という奴ね。
レイナはどうしていいのか判らなかったのでそのままでいた。
だってどうみても被害者だし。
それについては誰も何も言わなかった。
「で、今後の対応はどう考えているの?」
なぜかシンがナオに直接聞いた。
サリじゃないの?
だってやったのはサリの妹という話だし。
それに何か、シンが興味深そうな表情だ。
試している?
「データを加工してアップしようかと」
「ふうん」
「もっとCG風にして、後は似たような画像を大量に作って拡散します。
『中の人』らしい呟きも」
シンが頷いた。
「それで収まると思う?」
「少しは騒がれると思いますが、そのうちに収束するかと。
しなかったらまた別の手を考えます」
「よろしい」
シンが頷いた。
「じゃあそういうことでよろしく。
みんなもいいね?」
「「「「はい」」」」
さすがはシン。
大人の貫禄という奴か。
でもちょっと待って。
今あるデータを加工するのはいいとしても、もっと大量に作るとか言ってなかった?
「わたし、もうコスプレしないよ?」
「大丈夫よ。
もう素材はたくさんあるから」
さいですか。
良かった。
「みんなを呼びつけて悪かったね。
お詫びに何かしようか?
レイナ、君の部屋に行ってピザでもとったら。
僕が奢るから」
シンが優しく言うとほっとした空気が流れた。




