表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第七章 聖女、受験する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/403

幕間9

 軽井沢由美子は戦慄していた。

 ここ、乙女ゲームの中じゃないよね?

 私いつの間にか転生していた?

 横目で恐る恐る隣の席に座っている少女を見る。

 地味な原色のワンピース。

 スカートも靴も量販品だ。

 だが由美子の目には豪華絢爛たるドレスに映った。

 だって着ている方が乙女ゲーム「金の乙女は月夜に歌う」の準主役というか、一部でヒロインを喰ってしまうほどの人気を博したアイリーン様なのだ。

 麗しいという表現では到底語り足らない完璧な横顔。

 白銀の長い髪は巻かずに流され、細い身体を覆っている。

 ビジュアルは至高。

 いくらお金を掛けてコスプレしても、ここまでの完成度はあり得ない。

 しかもである。

 アイリーン様が座っていらっしゃるのはコスプレ会場の舞台ではなく高等学校卒業程度認定試験の試験会場なのだ。

 なんで?

 どうしてアイリーン様が高認試験受けてるの?

 あり得ないでしょう。

 そもそもこのアイリーン様がコスプレなんかであるはずがない。

 重度のヲタクとして数々のコスプレ会場に参加し、数限りないコスプレイヤーを観てきた由美子には判る。

 これは本物だ。

 本物のアイリーン様だ。

 だって威厳というか、貴種だけが持つ凄まじいまでの後光(カリスマ)が周囲を威圧しているのだ。

 衣装とか造形以前に、どうみても普通の人間ではあり得ない。

 貴族でもここまで行くかどうか。

 神?

 そんな存在が普通に高認を受けているという状況が納得出来なかった由美子は思わず声をかけてしまった。

「あの」

 アイリーン様が優雅に首を回して由美子を見る。

 それだけで腰が抜けそうになった。

「何でしょうか」

 必死で絞り出す。

 声が震えてしまった。

「いえ、その。

 外国の方ですよね?」

 アイリーン様は少し眉をひそめられたが淡々と答えてくれた。

「日本人です。

 日本国籍を持っています」

 この容姿、お姿、威厳、そして完璧な礼儀(マナー)で?

 しかし本人は大真面目に見えるし日本語もネイティヴだ。

 アイリーン様って日本人だったの?

 いや設定ではセレニア王国の侯爵令嬢だったはずだ。

 しかし反論など出来ない。

 どこまでも一般人と隔絶したこの高貴な存在がそう言うのなら、それが真実だ。

「あ、そうですか……」

 ついうつむいてしまった。

 これでは後が続かない。

 というよりは続けて良いものだろうか。

 貴族令嬢に庶民出身のメイドが図々しく絡んでいるようなものなのでは。

 アイリーン様は由美子を見ていたが、反応がないせいかスッと前を向いた。

 助かった。

 許して頂けたらしい。

 しばらくして試験が始まったが由美子は気もそぞろだった。

 これではいけないと判っているのに問題に集中出来ない。

 ヲタク趣味が高じて高校に通う時間すら惜しくなり、高認とって高校を中退して大学に行くまでに思う存分趣味に浸ろうという計画が。

 だが、それすらどうでもいいことに思えてしまう。

 結局、試験時間中はひたすらアイリーン様のご尊顔を横目で鑑賞することで終わってしまった。

 結果は散々だった。

 これは別に由美子だけではなかったらしく、教室にいた受験生の大半は由美子と似たような状態だったらしい。

 アイリーン様はひたすら真面目に試験を受けておられた。

 そのご様子すら尊すぎて誰も話しかけるどころか近寄ることすら無理だった。

 試験会場に入る前にカンニング防止のためスマホや電子機器を取り上げられていたため、そのお姿を記録することが出来なかった。

 というよりは恐れ多くて盗撮など不可能だっただろう。

 それでもスマホを持ち込もうとした連中がいたらしく、早々に退場させられていた。

 由美子はそんなミスは犯さなかった。

 もはや高認などどうでもいい。

 ひたすらアイリーン様のお姿を脳裏に焼き付ける。

 その後、ネットで侍女やメイドに囲まれたアイリーン様の画像を見つけて狂喜することになる。

 あれはCGだという結論になったらしいが由美子は知っている。

 アイリーン様は実在する!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この系統の外部視点は継続して欲しいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ