表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第七章 聖女、受験する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/403

100.五月蠅いぞ!

「そうおっしゃらずに」

 イケメンは道を塞いでレイナを通そうとしなかった。

 大柄というよりは背が高くて手足が長いので狭いカラオケの通路を塞いでしまっている。

 脇をすり抜けることは出来るだろうが身体の一部が接触する。

 レイナは躊躇しなかった。

 ポーチを開けてブツを取り出し、ピンを思い切り引き抜く。

 つんざくようなアラームが響いた。

 レイナですら思わず耳を押さえるくらいの大音響で、説明書によればどれくらいのものか判らないけど140デシベルの音が出るらしい。

 LEDライトもついていて懐中電灯にもなるという優れもので、ナオが教えてくれて通販で買ったものだ。

 シンに言ったら賛成された。

「聖力は無敵だからこそ、それを使う羽目になる前に何とかする方法は用意しておくべきだよね」

 女性用の防犯ブザーというには効果がありすぎるみたいだが、大は小を兼ねるということで。

「何だ何だ」

「火事?」

「五月蠅いぞ!」

 たちまち複数のドアが開いてどやどやと出てくる人たち。

 イケメンは素早かった。

 あっという間に人の間を縫って駆け去ってしまった。

 障害物競争の選手か。

 レイナがブザーを止めるとしばらくして皆さんがブツブツ言いながら部屋に戻っていく。

 文句を言いたい人もいただろうが、レイナが敢えて軽い威圧を加えていたせいだろう。

「今のレイナが?」

 リンが心配そうに聞いてきたけどそっけなく首を振るに留めた。

 部屋に戻って何事もなかったかのように曲を予約する。

 みんながそれぞれの目付きで見てきたけど何も言わない。

 ただ、レスリーだけが泣きそうな目で小さく拝んでいた。

 やっぱり関係者か。

 それにしてもカラオケ店の中まで追いかけてくるとか。

 しかもあんな稚拙なやり方で接触しようとするなんて。

 その後は何事もなく終わって解散した後、レイナはレスリーにメッセージを送った。

『聞きたいことがあるから来て』

『了解しました』

 レイナの住所は判っているはずだ。

 1時間くらいでレスリーが現れたのでエントランスに迎えに行く。

「ごめんね呼びつけたりして」

「とんでもないです。

 こちらからお話ししようかと」

「それは後で」

 エレベーターで向かった先はレイナの部屋ではなかった。

「ようこそ。

 レスリーさんは初めてだね?」

 シンが歓迎してくれた。

 もちろん、シンが在室していることを確認してからレスリーを呼んだわけで。

 レスリーは硬くなったままソファーに腰掛けて、シンとレイナが向かい側に並ぶなり頭を下げた。

「申し訳ありませんでした!」

「うん。

 何があったかはレイナから少し聞いてるけど、知ってることがあれば教えて欲しいんだけど」

「もちろんです!

 何も隠すなと」

 そういう命令を受けているらしい。

 それからレスリーはさっきの出来事の裏側を話してくれた。

 解散した後、すぐにタイロン氏に連絡して調べて貰ったそうだ。

「レイナ様が接触したのは私の従兄弟(いとこ)の一人だと思います。

 少なくとも私の兄弟ではないです」

「そんなにたくさん親戚がいるの?」

 思わず口を挟んでしまった。

「はい。

 一族は何百年も前から婚姻政策で勢力を維持してきましたので。

 今、従兄弟(いとこ)と言いましたが実際の関係はもっと複雑というか、遠いです」

「それにしてはレスリーに似ていた気がする」

「私の顔は一族の典型的なものですよ。

 多産な家系でもありますし」

 レスリーみたいなのがゴロゴロいるのか。

 モテモテの一族なんだろうな。

「その従兄弟(いとこ)さんは何をしたかったの?」

「はっきりとは判りませんが、伯父の話では抜け駆けしてレイナ様と親しくなろうとしたのではないかと。

 自分の顔に自信があったみたいですし」

「無茶じゃない?」

「情報統制されていて、一族内ではいい加減な憶測がまかり通っているそうです。

 レイナ様のこともしょせんは不法移民の孤児だろうとしか思ってない連中もいる、と伯父が嘆いていました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ