初夏の邂逅
今回は、なろうでとても仲良くさせて頂いている夏月 海桜 様の作品「転生をお願いされてお見合いババァを命じられました〜え、めんどくさい〜」の主人公ターナとのコラボ作品となります。
お話も好きなんですがターナちゃんが大好きで、夏月さんに「ターナちゃん書いていい?てか、書いたけど投稿していい?」と畳みかけて了承を頂きました。ほぼ事後承諾ww
知っている方も知らない方も楽しんで頂けたら嬉しいです。
それは、空気が熱を孕み始めた初夏の出来事。
やっと空が明るくなってきたが、まだ星の残る早朝に魔獣襲撃の警報が鳴った。
飛び起きて準備してる間にやってきた連絡係に詳細を聞く。数は多く無いから大丈夫とか言われても、起きたし。僕が加わって早く終わるなら参加するでしょ。
早駆けして夜番の騎士団の人たちと合流して、討伐に加わる。
「あー!もー!朝ごはんも!マグノリア、に、朝の、挨拶も、して、ない、の、にー!!」
木が密集してて魔法が使いにくいからほぼ肉弾戦。剣は振るよりも突く攻撃になるので、上手くいかないと致命傷にはなり難い。
面倒だなぁ。こう、自動で追撃する魔法とか出来ないかなぁ。
前よりも体が動くからいいけど、空きっ腹で動くのキツいんだよ、もお!!お腹空いた!!
熊型の魔獣は体も大きいし、意外とスピードがあるから厄介。数が少ないのは助かるけどね。
「気合い入れていけ!朝ごはんまでに終わらせるぞ!」
「ご領主、その掛け声はちょっと…」
真面目に檄を入れたのに、団長から否定された。
いいじゃん、明確な時間も分かるし。みんな朝ごはん食べたいでしょ?
「まぁまぁ、団長。ご領主様ですしね」
「そうそう。朝ごはんまでに終わらすぞー!」
「「「おおーー!!」」」
ほらね。
やっぱりみんなお腹すいてるんだよ。
気合い入れたおかげか、結構早く終わった。帰ってお風呂入ったら朝ごはんには間に合いそう。やったね。
それよりも、なーんか空気がざわついてる気がしてならない。
空気というか、空間というか、嫌な感じじゃ無いんだけど、ぐにゃぐにゃぞわぞわしてる感じ。
なんだろうなぁ、これ。
帰り道、騎乗して森を抜ける直前、前方の空間が歪んだ。
繊細な馬が怯えるように後退するのをなんとか止まらせる。
具沢山スープをかき混ぜるようにぐるぐると何かが渦巻いていたものがピタリと止まったと思ったら、今度はゆっくりと解けていく。
正常に戻る渦から人影が現れた。
「ん?あれ?なんで外?」
何も無かった空間から現れた女性は、周りを見回して首を傾げるとふらりと倒れた。
咄嗟に抱き留めれたので、地面とぶつかる事は無かったけど、ビックリしすぎて心臓がドクドクしてる。
受け止める為に抱きとめちゃったせいで、彼女の服とか顔に魔獣の血とか泥とか付いちゃった。シンプルだけど、生地とか上等そう。
「これは…弁償かなぁ…」
意識の無い彼女に怪我が無かった事だけは幸いかな。
突然現れた不思議な女性は、屋敷に到着すると同時に目が覚めてくれたのは良いんだけど、なんだか不思議な人だった。
知らない人に抱き上げられてたら驚いたり暴れたりせるかと思ったんだけど、すごい冷静だった。って言うか、目が据わってた。なんかすみません。
「あ、下ろしてくれて大丈夫ですよ」
「あぁ、はい。すみません」
フラつきも無く背筋を伸ばして立つと、にっこりと笑うとスカートを軽く摘み会釈をした。
「保護してくれたんですよね?申し遅れました。私、システィアーナと申します」
「あ、ご丁寧に。僕はアルフレッド・サジ・マークロウです。ここ、ベイエット領の領主をやってます」
「お若いのに領主さんですか。すごいですね」
なんだろう。
見た目は僕よりも若いのに、それに見合わない落ち着きぶりというか、視線が母や叔母世代のそれによく似てる気がする。
変な人だなぁ。
「アルフレッド様。お帰りなさいませ。お客様ですの?」
愛しの奥さんの声が聞こえて振り向けば、窓から降り注ぐ朝の光に照らされた女神がいた。
「ただいま、マグノリア」
近づこうとした僕の横を凄い勢いで何かが通り過ぎた。
「初めまして。私、システィアーナと申します。気軽にターナと呼んでください。ぴちぴちの100歳です!」
「え?えぇ。あの……アルフレッドさま、こちらの方は?」
凄い勢いで走り寄ったシスティアーナさんがマグノリアの両手をガシッと掴んでいる。
困惑気味の視線を向けられたけど、僕にも分からない事ばかりで申し訳ない。
えっと、とりあえずその手を離して、僕の奥さんを返してくれないかな。
とりあえず僕もシスティアーナさんもお風呂に入って身綺麗にしてから、一緒に朝食を取りながら話しをすることになった。
「ターナでいいですよ」とマグノリアのついでな感じで許可されたので、ターナさんと呼ぶ。
ターナさんは、こことは違う世界の住人らしい。別の大陸ではなくて、目に見えなくて移動しても行けない場所ってどこ?
上手く飲み込めない僕らに、小さな箱を一つ取り出して説明してくれた。
「この箱が世界の一つとするでしょ?他にも箱はたくさんあるけど箱の中に住んでいる人は知りようがないよね?転移魔法ってのは箱から箱へ飛び移る感じなのよ。まぁ、私も聞いた話だから、簡単な事しか分かんないけどね」
ターナさんは僕らとは別の箱(世界)に住んでいて、その転移魔法の研究に巻き込まれたらしい。これについては「あんのバカ男っ!帰ったら覚えてなさいよ!」と大層お怒りだった。が、「まぁお陰でリアに会えたから、少しは手加減してやるわ」と不敵に笑っていた。
手加減しても酷いことになりそうな気はしたけど、触らぬ神に祟りなしって言うし。そっとしておこう。
それにしても移動できる魔法って便利そうだよね。どういう原理だろ。
ちょっと聞いてみたけど、肉体の再構築?空間認識?分からない単語が多すぎるので無理っぽい。
使えたら、どこにいてもマグノリアの元にすぐ帰れるのに。残念。
「ちょっと時間はかかるでしょうけど、迎えは来ると思うんで大丈夫です」
「でしたら安心ですわね。お迎えの方が来られるまでうちに滞在なさるといいわ」
「是非!ありがとう。美人なのに優しくて親切とか、ヤバイ惚れるわ」
惚れないで。僕の奥さんだから。
「ねぇ、リアって呼んでもいい?」
「まぁ。ふふっ。ええ、勿論よターナ」
「なんかね、リアとは初めて会った気がしないんだな」
それ、ナンパの常套句じゃない?
「嬉しいわ。私もなんだかそんな気がするの」
「本当っ?私たち両思いね」
「まぁ、ふふふ」
「リアは笑うと可愛くなるのね。いいわー、目の保養。これこそ眼福ってやつ?」
大変です。僕の奥さんが口説かれてます。
そして、マグノリアも満更でも無い感じ。
相手は女性だけど。女性だけど!なんか悔しい。
僕の奥さんなんですけどーーー!
「よし!女子会しよう!女子会。お茶とお菓子用意してさ。あ、ターナちゃん特製スイーツ作っちゃうよ。厨房借りてもいい?」
「まぁ。ターナはお料理ができるのね」
「簡単なものならね。夏に最適なスイーツ作っちゃおうか」
「楽しみだわ。見学しても良いかしら?」
「もっちろん!じゃあ、行こうか」
何一つ口を挟めないまま、ターナさんは僕のマグノリアを連れて出て行ってしまった。
いいな、女子会。参加しちゃダメかな。………ダメだよね、女子会だもんね。
「悲しい……」
早朝から魔獣討伐頑張ったのに。
僕の奥さんはターナさんに連れ去られてしまった。僕の奥さんなーのーにーー!
でも、笑顔をキラキラさせて楽しそうにしているマグノリアが可愛かった。
よほど哀愁を背負っていたのか、アルバートが僕の手にそっとキャラメルを一粒置いてくれた。
優しさが沁みる。
ターナさんの世界の人たちは寿命が300歳ぐらいで、ターナさんも僕より若そうに見えるけど100歳なんだって。
年上扱いするべきかと思ったんだけど「女性に年齢の話はタブーだと教えてもらわなかったのかしら?」と恐ろしい迫力で脅された。
100歳でも寿命で計算すれば同年代だと言われて、なるほどと納得。そういや魔人も300とはいかないけど長生きだもんね。
その辺はマグノリアの方が順応性は高いのか、あっという間に意気投合した2人は、ターナさんの迎えが来るまで楽しそうに一緒に過ごすようになる。
いいんだ。
僕はマグノリアの笑顔が見れればそれで。
マグノリアが楽しそうだから、いいんだ。
ターナさんが帰ったら、独り占めだからいいんだ。
ちょっと、いや、かーなーりー寂しかったけどね。寂しかった分、ターナさんが帰ったら割り増しで構ってもらおう。そうしよう。
初夏の不思議な出来事は、マグノリアに新しい友人と、ベイエット領に新しいスイーツをもたらしてくれた。
*終わり*
お読みくださりありがとうございました。
夏月海桜 様の作品「成る程。では、お互い不干渉といきましょう。」(完結済、番外編更新中)の番外編『ほのぼのになったはずの一日』にアルフレッドとマグノリアが出張しております。




