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君の隣



豪華な大広間は大きなシャンデリアが幾つもぶら下がり、壁や天井の金の装飾をキラキラと輝かせている。

楽団の音楽に合わせて着飾った貴族たちが中央でくるくると踊るのを、僕は端に置かれた食事スペースから見ている。

手には料理の乗った皿とフォーク。

彩り豊かな野菜のテリーヌにミートパイが乗っている。どっちも美味しそう。

それをもぐもぐと食べながら、なんでここにいるのかと首を傾げた。

そう言えば、今日は建国祭だ。

あ、そうか。だからクラウドに領地をお願いして王都までやって来たんだった。

出来れば、建国祭も欠席したいんだけど、そういう訳にもいかないんだよね。仮にも末端の王族だし。

最低限の出席が求められてるのが新年の祝いと建国祭だけだから、こっちから文句言えないもんね。


に、しても。暇だなぁ。食べるぐらいしかやる事ないよ。

七面鳥の丸焼きに目が止まったが、何故か食べちゃいけない気がして手を引っ込める。

なんだろう。誰かに怒られる気がした。

誰に?

そういえば、なんだかさっきから隣が変だ。

誰もいない事が落ち着かない。

どうしてだろう?

いつもの事じゃないか。僕に近づいてくる人は滅多にいない。

王太子とか付き合いのある気のいい貴族や仕事で付き合いのある人ぐらいだ。基本的に領地からあまり出ないからね。

付き合いも最低限なんだよね。

女の人なんて寄ってもこないで、嫌そうな視線を投げつけてくるだけだし。


『あの方また太ったんじゃありません?』


『あんな体型でよく辺境伯が務まりますわね』


『ぶくぶく太って、なんて醜い』


『そんな体で恥ずかしくないのか?少しは痩せてみせたらどうだ?まぁ、痩せたところで醜男は醜男だけどな』


面と向かって話してくる人も、陰でこそこそと話す人もいる。みんな嘲りの笑顔を浮かべて。くすくすと楽しそうに陰口を囁き合う。

王族とは言え、末端であり太っていて醜い僕は格好の笑いの種なのだろう。


太ってて誰かに迷惑をかけたつもりはない。

ちゃんと辺境伯の仕事はしている。

誰に恥じるような生き方はしてない。

それに、言われたんだ大好きな彼女に。例え僕でも、彼女が好きな僕を侮辱するなと。

だから。彼女の為に僕は胸を張って誇りを持って、恥じる事などないと前を向いていなきゃいけない。


……彼女?

彼女って誰だろう。

僕には恋人も婚約者も、いない……?

あれ?

違う。婚約者がいる…。


視線を上げれば、視線の先でマグノリアが誰かの手を取って踊りの輪に加わろうとしていた。


「待ってっ!マグノリアっ」


行かないで。その男は誰?

皿を放り投げて追いかけるのに、全然距離が縮まらない。

ああ、体が重い。

あんなに頑張ってトレーニングしたのにっ。


僕以外の男に笑いかけないで。

声をかけないで。

離れて行かないで。

だって、僕は君がーーーーーー







バチっと開いた視線の先には見慣れた天井。突き出していた右手を何度も開いて閉じてと確認する。

それは夢の中の自分の手よりも骨張って少し逞しくなった今の自分の手だった。

確認を終えた両手で顔を覆う。


ーーーーー夢。


良かったぁぁぁ。

顔や上半身をぺたぺたと触ってみれば、夢の中のような脂肪はない。


ーーーーー今の、僕だ。


あの頃の自分が嫌いだったワケじゃない。

ただ、魔法使いだからとか、美味しいものが好きだからとか色々と言い訳じみた事を並べていたのは事実だから、ほんの少し後ろめたい。

マグノリアの隣に立つなら、太っているよりも鍛えた今の方がいい。


横を向き少し体を起こして、隣で眠るマグノリアを見る。

すーすーと寝息を立てて眠る姿に見惚れる。

本当に、君は僕でいいんだろうか。

愛してるし、愛されてる事も分かっているつもりだけど、どうしても偶に不安になる。


「愛してるよ…」


囁いて、髪を一房手に取って口付ける。

だから離れていかないで。

女々しいかな。マグノリアに怒られちゃうな。

その姿が難なく想像できて思わず笑ってしまった。


「………ん…」


あ、やばい。起こしちゃったかな。

まだ眠たげに少しだけ目を開けて僕を見る。


「こわい夢でもご覧に、なったの?」

「あ、うん。ちょっとね」


寝起きのマグノリアの可愛さにドキドキしてると、彼女の右手が伸びて僕の頬を軽く撫でる。

「仕方のないひとね」と緩く微笑むと、その手が僕の頭を引き寄せて、その豊かな胸に抱え込まれていた。

咄嗟に体重をかけないようにしたけど、大丈夫だったかな。

ほっとした僕の頭をマグノリアが両手で抱きしめるから、柔らかな感触が顔全体を包み込む。


「大丈夫だから、お眠りなさい」


寝ぼけたマグノリアは抱きしめた僕の後頭部を優しく撫でてくれる。

何、この天国と地獄。

気持ち良すぎるけど、この先に進んで彼女を起こすのも申し訳ない。触りたい。でも起こしたくない。

寝てる彼女に勝手な事しちゃダメだろうっ。

でも離れたくないっ!




マグノリアが再び寝入るまで、僕の葛藤は続いた。


ふと思いついたので、久々に書いてみました。

夜着は薄いからアルフレッドの葛藤はかなり大変だったのでは?と推測します。

マグノリアが起きたらなんとかしてもらえ(笑)

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