第9話:のどかな日曜日の昼下がりに。
「…これは何ですか?お姉様?」
気絶から目が覚めると、椅子に縛り付けられた俺に突き付けられる、一枚の紙切れ。
「知らない?入籍届けって言うんだよ?」
「…そんな物が何故ここに?」
「私が、薫ちゃんと結婚するからだよ?」
………はぁっ!?
「…まだ17歳なんですが。」
「うん。とりあえず先に記入してもらおうと思ったの。」
可愛い笑顔でサラリと答えてくる乙姫。
…目が笑ってない。
「……誰か、助けてぇっ!!」
半泣きになりながら叫ぶ俺に、熱い眼差しを送り付けてくる。
「ふふっ。家に誰もいないわよ。二人っきりね。」
「お姉ちゃん!」
「あん。乙姫って呼んで!…あ・な・たっ♪」
…駄目だ。イッちまってる。
なんとか抜け出そうと体を揺するが、思った以上にきつく縛られてやがる。
「無駄だよ?今回は自信があるの。縄縛りのスキル上がったでしょ?」
「そんなもんスキルアップせんでもいいわっ!!」
「…好きじゃないの?気持ち良くない?」
「何がじゃあーっ!!」
…あかん。やはり長女。ネジの緩み具合は、他の姉妹と同じだ。
「照れなくてもいいんだよ?」
「照れてない!照れてないっ!!」
「…んもうっ!薫ちゃん私の事キライ?」
…うぅ。そんな目で見るなよぉ。
俺にどうしろと言うんだ?
「ねぇ?薫ちゃん。私の事スキよね?」
「…包丁を突き立てながら聞かないでください。」
…普通にできないのかよ。この姉妹は。
「とりあえず、縄解いてくれ!」
「答えてくれたら、解いてあげるよ?」
…痛い痛いっ!包丁がチクチクとっ!!
「わ、わかったっ!言うから包丁はやめれっ!!」
「うふふっ。じゃあ聞かせて。」
むぅ。仕方ない。言えば良いんだろ?
期待に瞳をキラキラと輝かせる乙姫に、覚悟を決めて告げてやる。
「…好きだよ。」
嘘は言ってない。
「じゃあ愛してる?」
「くっ…愛してる。」
…大事な家族だからな。
「エヘヘ。嬉しいな♪」
そんなに喜ばれたら、なんか罪悪感が…。
「約束通り、解いてあげるね。」
(ふぅ。やっと開放されたぜ。)
心の中で溜息をつきながら、痺れる体に力を入れる。
「薫ちゃんの愛の告白も終わったし、これ書いてっ。」
そこには先程の入籍届けが。
「えーっと。…さらばっ!」
トテン。
……体が痺れて動かないんですけど。
逃げ出そうとした俺は、床に転げながら、笑顔で寄ってくる乙姫に視線を向ける。
「あらぁ?今逃げようとしたぁ?」
「…ひいぃっ。」
奴の背後に何かが見える。
(蛇だっ。大蛇が見えるっ!!)
蛇に睨まれた蛙の如く、ガタガタと震える俺に言い放つ。
「念のために痺れ薬飲ませてたの♪」
「縄で痺れてたんじゃないのかよっ。」
「今夜が二人の新婚初夜ね♪」
「馬鹿言うなっ!!」
「大丈夫。痛くしないから♪」
「何がじゃあーー!!」
いつもの様に俺の悲鳴が虚しく響き渡る。
「さぁ。あ・な・た♪子供は二人が良いな☆」
「いやぁぁーーっ!!」
世間ではのどかな筈の日曜日の昼下がり…。
絶体絶命のピンチの中、俺はこう叫ぶのだった。
「まずは交際日記からぁっ!!!」
初めての後書き。てかお詫び? 連載全話かなりの誤字脱語があると思いますが、どうかご容赦を。…えっ?気にする程のレベルの文章じゃないから大丈夫? まぁそう言わずに(笑)




