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2人は辺りを見渡した。どこに行こうか迷っているけれど、予約制のパビリオンだ。取れるかどうかわからないけれど、みんなが勧めているのだ。どこにも行けるようだ。今日は2人のために特別にやっているようだ。
「どれにしよか」
「一番行きたい所でええよ」
2人は考えた。行きたい企業パビリオンはいろいろあったけれど、2人が注目していたのはガスパビリオンだ。以前から楽しそうだ、自分も体験してみたいなと思った。だが、人気があって、なかなか取れなかったという。周りの人には、行けた人もいて、うらやましく思っていた。
「うーん、じゃあ、ガスパビリオンで」
「そっか。じゃあ、いこう!」
2人はスタッフに誘われて、そこにやって来た。周りには、パビリオンのスタッフがいる。まるで、2人を待っているかのようだ。そして、多くのスタッフがいる。彼らも一緒に来てくれるようだ。寂しいからだろうか? それとも、一緒に行こうと思っているんだろうか?
2人は青く光っている通路を進んでいく。このパビリオンの正式名称は『ガスパビリオン おばけワンダーランド』というらしい。XRゴーグル、このパビリオンではバケルゴーグルと言っているが、それを付けて、様々な体験をするという。2人はワクワクしている。自分もそれを体験するんだ。
2人は開けた場所に出た。そこには、大きな画面があり、広く幅が取られた机の上にはXRゴーグルがある。
「これがおばけワンダーランドなんか」
「すごいな」
噂によると、このXRゴーグルを付けると、自分や周りの参加者が白い布をかぶったおばけになるという。その体験が面白くて、ずっと行きたくてしょうがなかった。
「このゴーグルを付けるんか?」
2人はXRゴーグルを付けた。すると、自分や周りの参加者がおばけになっている。言ったとおりだ。
「すごい! みんなおばけになっとる!」
みんな驚いている。これを自分が体験できて、本当に嬉しいな。これは、忘れられない1日になりそうだな。
「すごい! 体験動画でしか見た事がないけど、そうやったんか」
そして、アトラクションが開催された。案内役のミッチーが出てきて、みんなおばけに化けられたか確認している。そして、色とりどりのおばけがやって来た。彼らはプレゼントを持っていて、それを両手で取っていく。そういえば、今日はクリスマスイブなんだな。これは2人へのクリスマスプレゼントのようだ。とても嬉しいな。
「プレゼントだプレゼントだ! やったー!」
2人は喜んでいたが、辺りの雰囲気が一気に変わった。どこか怪しげな感じになり、何かが出てくる。何だろう。
「あれっ・・・」
そこに現れたのは、黒いおばけだ。そのお化けは、名前からするに、二酸化炭素のおばけだろう。2人は緊張していた。
「そんな・・・」
辺りは壊され、足元が岩になった。2人は驚いている。と、そこに優しい女性の声がする。世界を助けたいと願ってと言っている。胸に手を当てると、手が光った。
「ひ、光った!」
2人は驚いている。女性は黒いおばけに向かって光線を放ってと言っている。2人は手から放たれた光線を、黒いおばけに当てていく。周りの参加者も当てていく。
「当てろ当てろ!」
女性の声がした。化けろのかけ声でもっと強くなるという。本当に強くなるんだろうか? それで世界を救えるんだろうか?
「化けろーーー!」
すると、光線が強くなった。そして、黒いおばけが苦しんでいる。もう一度叫んでと声がする。
「化けろーーーーーーーー!」
すると、黒いおばけは消えた。2人は喜んだ。
「やった! やった!」
「よかったね! 君もヒーローになれたんだよ!」
2人はXRゴーグルを外して、周りを見た。2人は体験できた。本当に今日は嬉しい1日だな。
「ほんま、嬉しいわ」
と、横にいたスタッフが笑顔で2人を見ている。どうしたんだろうか?
「よかった?」
「うん」
今日は本当に嬉しかった。まさか、本当に行けるとは。
「お客さん、終点ですよ」
その声で、2人は目を覚ました。どうやら、コスモスクエアで降りるはずが、終点の夢洲に来てしまったようだ。辺りを見渡すと、電車には2人しか乗っていない。
「あれっ!?」
「終点か・・・」
駅員は戸惑っている。何か夢を見ていたようだ。どんな夢を見ていたんだろうか?
「どないしたん?」
「いや、万博に行った夢を見て」
それを聞いて、駅員は大阪・関西万博の日々を思い出した。多くの人がやって来て、大盛況だった日々が、今ではまるで夢のようだ。
「そっか・・・」
2人は夢洲駅に降り立った。目の前には東ゲートがあるが、解体が進んでいて、徐々に大阪・関西万博の風景は薄れていく。
「ここは、夢洲なんやね」
「うん」
2人は賑わったあの日々を思い出した。あの日々がまるで夢のようで、とても泣けてくる。もうあの日々は戻ってこない。だけど、夢の中、心の中では続いていくんだろうか?
「かつてはここに多くの人が集まったんやね」
「うん。ここはまるで夢の跡のようや」
夢洲はまるで夢の跡のようにたたずんでいる。そう思うと、あの日々はまるで夢だったように見える。多くの人々のきらきらした目が行きかい、誰もがきらきらと心を輝かせた日々。だけど、それらはみんな思い出になりつつある。
「あれは、ほんまに夢やったんかな?」
「いや、夢じゃなかった。本当にあったんやよ。思い出になっただけなんやよ」
大阪・関西万博は終わり、大阪は元の大阪に戻った。夢洲からは日に日に大阪・関西万博の風景が薄れていく。だけど、少しは残るだろう。そして、ここに来るたび、思い出すだろう。あの日、世界が1つになり、熱狂した日。そして、未来への夢を語り合った日。終わってしまったけれど、思い出になっただけなんだ。目を閉じて、夢を見れば、あの日々にいつでも会えるだろう。
「目を閉じると、あの楽しかった、夢のようやった日々を思い出すわ」
「万博はこれからも、みんなの心の中で続いていくんかな?」
2人は東ゲートをずっと見ている。この世界は未来に続いている。そして、ここでの半年間の日々を、この夢の続きを、心の中で思い出すだろう。




