74.ゾーイとルーシー
私はゾーイ。
ライル様に解放された元奴隷。
私は盗賊の牢屋でライル様に助けられたとき、
ライル様がすごい人だと気づいた。
使っている馬車はマジックアイテムだし、御者はゴーレムだったからだ。たぶん上位ゴーレムだ。
奴隷になる前は、商人の娘として生活していた。
親に連れられ様々な人と会っていた。
今まで出会った商人の中でもあんな希少な馬車を持っているのは大商会だけだったし、
あんなに人間のように動くゴーレムは見たことない。
父親は人のために働くのが大好きな人間だった。
食料難の村に物資を安く売りにいくような性格で、商人には向いてない人間だった。
だがそんな父親を私は尊敬していた。
あの時も食料難の村に両親とともに向かっていた時だった。
私達は盗賊に襲われて、両親を殺された。
そのあと奴隷商に売られるまで酷いこともされた。
同じように捕まっていた女性が多かったおかげで、酷いことをされる頻度はだいぶ少なかった。
だけど私は諦めなかった。父親のように誰かのためになることがいつかできると信じて。
その盗賊に捕まっている時に、ルーシーと出会った。
私と同じように盗賊に酷いことをされていたルーシーはよく泣いていた。
同い年ということで仲良くなったルーシーを私が慰めることが多くなった。
そのあと違法奴隷商に売られ、本拠地がある領地に移動してるところで、盗賊に襲われて今に至った。
わたしを助けてくれたライル様はたぶんすごい人。
わたしの力は誰かのためなら発揮される。
希望を求めていたわたしに希望を与えてくれたライル様のために私は頑張ることを決めた。
▽ ▽ ▽
「すごい!」
私はライル様から与えられた部屋を見て驚いた。
見たことのないトイレとお風呂。フカフカのベッド。
こんな部屋が私の部屋なんて夢のようだった。
私はライル様に解放されたあと、ライル様のところへついていくことを決めた。
理由は、いつも助けてくれたゾーイが行くからだった。
村に向かう道中、ライル様は私にはあまり話かけることはなかった。
話しかけてくれるのはリリアンさんやクララさんだけだった。
奴隷と主人の関係ではないが、雇い主のような存在のライル様に嫌われたと思い、思い切ってリリアンさんに聞いてみた。
「リリアンさん、私ってライル様に嫌われてるのでしょうか?」
「え?なんで?」
「解放していただいてから、一言二言くらいしかお話していません。ゾーイやオリバーさんには話しかけてる姿を見るんですが、私には一切」
「あーそれは、ライルくんの気遣いよ。嫌われてなんかいないわ」
「気遣い?」
「ゾーイとあなたが盗賊に酷いことをされたのを聞いたライルが、あなたに男性が近づかせないように言ったのよ」
「え?」
「ゾーイはライルくんのために働くため、率先してライルくんとコミュニケーションを取ろうとしてるから、大丈夫と判断したんだと思うけど、あなたは時々ヒューズやカインさんに怯えていたように私も感じたから、自分から話しかけられるようになるまではってことよ」
「気遣っていただいていたのに、私は…」
「気にしなくていいのよ、ライルくんも私達もあなたを仲間で家族だと思ってる。だから、そのために必要な気遣いなのよ」
私はなんて愚かな勘違いをしてしまったんだろう。
私なんかのために気を遣ってくれて、
私を仲間と言ってくれて。
変わらなきゃ、すぐには無理かもしれないけど、
私のために行動してくれたライル様とみんなのために、私は変わらなきゃいけない。
ベッドに座り、ルーシーは決意した。
「明日はライル様に話しかけに行こう」




