69.卵について
宿屋に戻った。
泊まった宿屋はカラッカの街でも1番大きな宿屋だった。
ヒューズさんが言うには、フリードやグーちゃんが入れる厩舎があるのはここにしかないようだ。
昨日の夕飯もこの宿の食堂で食べたが、なかなかおいしかった。
みんなまだ買い物をしているようで、部屋のベッドで横たわってくつろいでいた。
「なんかいきなり大金手に入れちゃったなー。土地を買うのは確定してるとして。父さん、何に使おう?」
「うーん。今までは食材とか日用品とか買ってたな。でもライルのおかげでそこらへんの心配が要らんしな」
「マスター、お父様。お話を遮って申し訳ありません。何を買うかの話ですが種を買いに行くのはいかがでしょうか?それにキーが採種できるので、野菜を買いに行くのもおすすめします」
「それいいね。さすがゴーレ!じゃあ食堂で昼ごはん食べたら行こう」
「そうだな、行ってみるか」
▽ ▽ ▽
カラッカの街の市場街に着いた。
いろんな店舗や出店や露店が多く、賑わっている。
「村もこれくらい賑わって欲しいな」
「そうだなーこれくらいの活気はほしいよな」
市場街を見て回った。
「お、タマネギ!これもうちでやれそうだな。こっちはカボチャか。ピーマンと大根もある。おじさん!タマネギとカボチャとピーマンと大根を10個ずつちょうだい!」
「はいよ!」
お金を払おうとすると、見覚えのあるものが積まれていた。
「おじさん、これってアボカド?」
「坊主!よく知ってるな。なんか珍しいから仕入れたんだが、馴染みがないのはなかなか売れないな。足が早いから、ちょっと硬い状態で仕入れたんだが、それが失敗だったかもなー」
「おじさん。それ、俺が買うよ。1箱!」
「本当か?それは助かる!なんかお礼したいんだがなにがいい?」
「うーん。何がいいかな。なんか育てられる奴がほしいんだけど」
「それなら、農村で物々交換した時にもらって、処分に困ってたんだよ。ぶどうの苗木なんだが、ワインとかに使う赤ぶどうが10個、それと初めて見たんだが白ぶどうってやつが10個なんだが、これでどうだ?」
「最高すぎるよ。ほんとありがとう。これちょっと多いけど、お礼の気持ちも込めて」
「お、いいのか!ありがとよ」
野菜の出店を離れ、他の店を見て回る。
塩と胡椒と食用油を買い、花屋を回ったがあまり良さげな物がなかったので、宿屋に戻った。
▽ ▽ ▽
宿屋に帰ると、食堂にヒューズさんがいた。
「ほれライル。預かってた卵3つ返すぜ」
「ありがとうございます。ゴーレ、今日買った物と卵を馬車に入れといて」
「承知しました」
ゴーレがバッグと卵を持って馬車へ向かった。
「あと金貨15枚だ。ラビット型の大量発生の報告料の半分だ」
「ありがとうございます。報告はどうでした?」
「色々も何も、説明が大変だったぞ。上位種とかの魔石しかねーし、短期間で大量討伐してんだからな。まあそのおかげでAランクに上がった」
「おーおめでとうございます。この街で唯一ですよね?」
「まあな!でも俺達は村に戻るから、この街にはBランクが2組になるがな。
1組はおまえがボコボコにして装備もぶっ壊したから、部屋から出てこないらしいぞ」
「やりすぎは反省してます。でも村に移住をよくギルドが許してくれましたね?」
「必要な時は指名依頼を村に送ってくれって伝えておいたからだな。カラッカ領の他の町にはAランクもBランクも居るからどうにでもなるんだろう」
「ところで、卵について何かわかりました?」
「あーそこが問題なんだよ。あの卵やばいぞ」
「やっぱりそうなんですね」
「卵には意図的に魔力を注がれていた形跡があるらしい。そのせいで同じ型の魔物が付近に生まれたり、引き寄せられたりしたみたいだ。おまえが倒したゴブリンナイトは卵から生まれた可能性が高い」
「なるほど」
「しかも俺らが見つけた物以外にも、カラッカ領内のヤルク村のような冒険者がすぐに来られないような村近辺で卵が発見された。たまたま、別の依頼を受けた冒険者が対処して卵を回収できたようだ」
「じゃあ盗賊達はなぜ卵を?」
「多分誰かに依頼されて卵をいろんなところに置いていたんだろう。確実に誰かがカラッカ領を外から潰そうとしている」
「犯人の予想はついてるんですか?」
「ギルドでは大きくだが予想がついてるようだけどな、教えてくれなかったよ。まあでも、隣領のソブラ領からの攻撃だと思う。ソブラ領の領主はたびたびカラッカ領に嫌がらせをしてくるからな」
「なんでそんなことを?」
「元々カラッカ領はソブラ領だったんだ。カラッカ領主が功績を挙げ、その時不振だったソブラ領の半分を貰ったんだ。それが気に食わないのか、何代にもわたって嫌がらせをしてきている」
「そんな歴史があったんですね。カラッカ領主はやり返さないんですか?」
「領主には何度も会ったことがあるが、真面目でいい人間だからそんなことはしないだろう。騎士上がりだから、領政に関してはあまり得意そうじゃないがな」
「なるほど。それで、卵は孵化させていいんですか?」
「いいみたいだぞ。なんかあったら俺らが対処するし、お前もいるから任せるとギルドマスターが言ってた」
「なんでギルドマスターが俺を?」
「マリーナが伝えたんだろう」
「あーあの人か」
俺は受付のふりをしていた副ギルドマスターを思い出した。
「とりあえず、今後も村の周りに卵を置かれる可能性があるから時々見回りをするつもりだ」
「よろしくお願いします」
卵の孵化は怖いけどやってみるしかないな。
「そういえば商人ギルドはどうだったんだ?」
「うーん。結果で言うと大成功だったんですけどね」
「大成功だったのに何が不満なんだ!」
「またカチンと来てしまい、担当予定だった職員が異動、ギルドマスターが諸々を対応してくれて…」
「おまえその性格どうにかしろよ。敵ばっか作ったらいつか損するからな」
「はい、すみません」
「で、どれくらい儲けたんだ?」
「大金貨8枚くらいですかね」
「うお!思ったより稼いだな」
「ヒューズさんに大金貨1枚渡しますね」
俺は大金貨をヒューズさんに渡す。
「なんでだ?」
「この前50日延長したんで、プラス50日とかどうですか」
「まあもらっておくよ、金もらわなくてもやるけどな」
「けじめですよ。けじめ」
そんなことを話していると、買い物メンバーが帰ってきた。
みんなちゃんと買えたようだ。
「ライルくん。魔石を冒険者ギルドで交換してきた!それとお父さんとお母さんにお土産買ったよ」
「俺も交換してきた!俺もお土産買えた!」
「それはよかった。そろそろ夕飯の時間だから部屋に荷物置いてきな」
「「はーい!」」




