403.アルルハド領
鬼火亭で食事をしているとセフィーナさんが国王と騎士団を連れてやってきた。
国王はライル商会のカジュアルな服を着ている。
パッと見はただのおじいちゃんだ。
「今日も焼肉ですか?」
「ああ。昨日の食べた味が忘れられなくてな。昼はレストランライルに行ったぞ」
「そうですか。ありがとうございます」
「あの料理人は領主代行館の料理人じゃなかったのだな」
「はい。ブライズさんは村の時からヤルクに住んでて、今はライル商会の食品部門の代表です」
「ほーそうだったのか。素晴らしい料理人だな」
国王はヤルクのことが色々気に入ったみたいだ。
国王御一行は広めの個室へ案内した。
俺もご一緒することになった。
俺はカヴァーグさんの隣に座った。
「ライルくん。模擬戦では済まなかったね」
カヴァーグさんは申し訳なさそうに言う。
「全然大丈夫です。傷も全くないですから」
「ライル商会のポーションや回復魔法を使う人達のレベルが高いね」
「ポーションはペパイド領のとは比べないでほしいくらいの品質です」
シスターミアナは解毒ポーションと火傷治しポーションを上級まで作れるようになったらしい。
俺とカヴァーグさんが話していると、国王が口を開く。
「ライル。サオラル共和国に行くらしいな」
「そのつもりです」
何で国王は知っているんだ。
「サオラルには娘が居るから手紙を預けてもいいか?」
「娘?」
「長女の嫁ぎ先がサオラル共和国のマルティル家なんだ」
「マルティルって」
「学園に3男が居たはずだ」
まさかの第1王女の嫁ぎ先がイタロの家だった。
「それでしたらサオラル共和国に行く前に王都に寄ります」
「ああ、よろしく頼んだ」
国王から手紙を受けとることになったので、出発が大幅に遅れるだろう。
「ライルくん。もしサオラル共和国から帰ってくるときに時間があったらアルルハド領にもぜひ寄ってくれ」
「カヴァーグさんのお父さんが領主をしてるんですよね?」
「ああ。たぶんライルくん達が気に入るものがあるよ」
「気に入るもの?」
「ダンジョンだよ」
カヴァーグさんから話を聞くと、アルルハド領が管理しているダンジョンがあるらしい。
割と珍しいトロールやサイクロプスやギガースのような大型の人型モンスターが多いダンジョン。
俺のようにダンジョンマスターになっているとかではなく、コアを壊さずにを生かし続けているらしい。
カヴァーグさんが英雄の称号を得たきっかけがそのダンジョンでスタンピードが起きてそれを防いだかららしい。
「ちょっと面白そうなので寄りますね」
「来てくれたら案内するよ」
カヴァーグさんはニコっと笑って言った。
▽ ▽ ▽
翌朝、豪華な馬車がヤルクにやってきた。
馬車から降りてきたのはラドニークさんだ。
発展途中の街の半分を見て少し舐めていたみたいだ。
『秘密基地』の範囲内を見て目を丸くしていた。
「あれ?ラドニークさん?」
「ライルか」
「いらっしゃったんですか」
「ああ」
ラドニークさんはきょろきょろしている。
「案内します?」
「ああ。頼めるか?」
「はい。領主代行館に馬車を置ける場所があるんで」
俺はそう言いながら馬車の御者の隣に座って案内をした。
「こ、ここにセフィーナが暮らしてるのか?」
「はい。住宅兼仕事場みたいな感じですかね」
ラドニークさんはなりやら言いたそうにしていた。
ポーラさんに案内してもらい、執務室に行くとセフィーナさんと国王が話していた。
国王はまたシモンキリーの服を着ている。
毎回誰だか一瞬わからなくなる。
頼むから国王っぽい服を着てくれ。
「おお。ラドニークか」
「はい。予定通り参りました」
国王はラドニークさんが来ることを知ってたみたいだ。
行きにカラッカに寄ってたみたいだから、その時決めたのだろう。
「お父様。いらしてくれたんですね」
「ああ。さすがにセフィーナだけに任せるわけにはいかないからな」
「ありがとうございます」
セフィーナ様は頭を下げた。
「ライル」
「はい」
「今日中にカラッカの街に住んでる民で授与式を見たい者が、馬車で10台でやってくる。その対応はできるか?」
「問題ないですけど。宿屋も空いてると思いますし」
「宿代などは後日私に請求してくれ」
「わかりました」
どういうことか全く理解できなかったがとりあえず承諾しておいた。
▽ ▽ ▽
国王とセフィーナさんとラドニークさんとその部下達は授与式の打ち合わせをしていた。
俺は領主代行館の庭で時間を潰していた。
打ち合わせが始まる直前にラドニークさんから話があると言われたからだ。
庭で寝ころんでいると、カレンさんに呼ばれた。
「ライル様。ラドニーク様がお呼びです」
「あ?打ち合わせ終わりました?」
「はい。授与式についてお話があるようなので、ご案内します」
「はーい」
俺はカレンさんに付いて行き、セフィーナさんの執務室に入る。
執務室にはセフィーナさんとラドニークさんだけになっていた。
「ライル。まずいろいろ話したいことがある」
「ん?色々?」
「ああ。なんだこの領主代行館は!!うちよりも大きくて綺麗な館じゃないか」
「あっ」
そういえば作った当初からセフィーナさんが懸念していた。
「いやーなんか色々王族の人とか来るたびに増築してたら」
「はあー。カラッカの街が衰退している理由が良く分かった」
「ん?カラッカの街が衰退?」
俺は初耳情報に驚いた。
「いや言い方が悪かった。衰退というか変わっていってる。別にヤルクのせいではないんだがな」
「どういうことですか?」
ラドニークさんに話を聞く。
「かつてはモンスターが大量現れる土地だった。そのため冒険者も多く暮らしていたが今はほとんどがデスヘル拠点にし始めた。商人もライル商会のおこぼれをもらおうとヤルクやマヌセラやデスヘルに移った」
「ああ。なるほど」
「なので今カラッカは他領からの経由でしか街に訪れる人がいない。冒険者が減ったことで治安はだいぶ良くなり、領民は暮らしやすくなった。ただ大きく変化をしたことで少し活気が無くなってしまったんだ」
「なるほど」
少なからず俺のせいではあるみたいだ。
「なんかした方がいいです?」
「いや、大丈夫だ。宿などを増やして、カラッカ領のどの街に行くにもカラッカの街を経由してもらえるように工夫をするつもりだ」
「なんかすみません」
「いや、カラッカの街は少し衰退気味だが、カラッカ領は大盛り上がりしている。気にしないでいい。領主代行館が羨ましくて当てつけのようなことを言ってしまっただけだ」
ラドニークさんは申し訳なさそうに言った。
「まあ気にするな。カラッカの街はクライドがそろそろ帰ってくるから、任せて良いと思っている」
「お兄様が帰って来られるんですか?」
セフィーナさんが驚いたように声をあげた。
「お兄様?あーアイザックさんって次男だって聞いたな」
「ライルはクライドの事は知らないのか」
「はい。話の流れでカラッカ家の長男ってことは何となくわかりました」
「そうだ。緑弓騎士団に入団していたんだが、近々次期領主としてカラッカで働くと手紙が来た」
「なるほど」
緑弓騎士団は多分黄盾とか赤槍とかと同じ感じだろう。
「すまん。話がズレた。授与式でライル商会としてライルの登壇が決まった」
「ん?」
「そこでペパイドの件の報酬を渡す。英雄の称号を授与した後にそのままやる予定だ」
「それって俺じゃないとダメですか?」
俺はセフィーナさんを見る。
「ライル様。私も時々勘違いしますが、私はライル商会じゃないですからね」
「じゃあヒューズさん達がそのままもらう流れは?」
「国王様がライルに登壇させるように言ってる」
「え?あーこれは断れないやつですね」
「ああ」
俺は諦めて登壇することにした。
明日の授与式が少し楽しみだったが、めんどくさくなってしまった。




