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サプライズパーティーが始まる(2)

「(ん? おい。あれでいいのか? )」


 わたしの腕に抱かれているヒヨコちゃんの姿のベリアルが小声で話し始める。


 くぅぅ!

 かわいいっ!

 この角度からだと、つむじがよく見えるね。

 ぐふふ。

 最高だよ!

 しかも、吸い放題っ!


「(何が? スーハー)」


「(魔族は身体が大きいから皆、隠れている場所からはみ出ているし、天族は翼が丸見えだ)」


「(……確かに。でも、見て? 向こうから歩いてくるお父さんの嬉しそうな顔。スーハー)」


「(第三地区の皆には言えなかったけど、魔王は絶対気づいてるだろ?)」


「(……だよね。わたしもそう思うよ。見て? 吉田のおじいちゃんの顔。スーハー)」


「(ん? あそこにいるな? じいちゃんがどうかしたのか? )」


「(おじいちゃんも、お父さんがサプライズパーティーに気づいている事を知っているんだよ。スーハー)」


「(そうなのか? うわ……なんであんなにワクワクしているんだ?)」


「(おじいちゃんはね? お父さんがサプライズパーティーを知りながら、知らなかった振りをする姿を見るのを楽しみにしているんだよ。スーハー)」


「(……じいちゃんなら、そうだろうな)」


「(うわぁ……すごいね。おじいちゃんの瞳がキラッキラに輝いているよ? スーハー)」


「(お! 魔王が来たぞ)」


「ア! アレ! ミンナハ、ドコカナ?」


 ……!?

 お父さん!?

 演技が下手過ぎるよ!?

 カタコトになっているよ!?


「(ぷはっ)」


 吉田のおじいちゃん……

 笑いが、こらえきれなかったね。


「アレ? エット……ドコカナ?」


 お父さん!

 明らかに隠れきれていないパパと目が合っているよ!

 まだカタコトだし!


「(ぷはっ)」


 吉田のおじいちゃん!

 耐えて!

 まだこの寸劇は続くんだから!


「エット……アレ……ミンナハ、ドコカナ?」


 あぁ……

 見ている方が恥ずかしいよ。

 あれ?

 そういえば誰が『せーの』って言うか決めていなかったよね?

 これ以上はお父さんがかわいそうだから、わたしが……


「せーの!」


 おぉ!

 吉田のおじいちゃん……

 わたしが言う前に言ったね。


「「「おめでとう!」」」


 皆で建物の陰から飛び出すとお父さんが恥ずかしそうにしている。

 ……見ている方も辛かったよ?


「ア……エット……ウワア……ウレシイナア……」


 お父さん……

 もう大丈夫だから……

 サプライズパーティーって難しいね……

 それにしても、吉田のおじいちゃんはご機嫌でニヤニヤしているね。


 あ……

 お父様に頼まれたサプライズパーティーも第三地区の皆と準備しないと。

 ……あぁ。

 お父様がわたしにキラキラの瞳でアピールしているね。

 期待しているっていう事かな?

 自分の誕生日をサプライズパーティーしてくれなんて言う人を初めて見たよ。


 第三地区の皆はお父様のサプライズパーティーに協力してくれるかな?

 ケーキのロウソクもどうしよう?

 何千本も立てる事になったら……

 はぁ……

 先が思いやられるよ……

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