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叶恵さんと合コン:上

 

  

 ことの起こりはこうであった。



「先輩」

「どうしたの、美華ちゃん」


 ちょうど空いていたベンチでお昼の休憩時間中、いつも通り可愛らしい美華ちゃんはその猫目をキッと吊り上げ私を見ていた。

 お、おや? これはまさかのお師匠お怒りモードですか?

 仕事の質問かなとふんわり考えていたので、不意打ちにドッキドキである。ひとまず糖分ちょこを取り出して貢物作戦を試みる。

 あ、美味しかったのか若干目元が優しくなったような…


「って、和んでる場合じゃないですよ! 先輩全然進展とかないじゃないですか!」

「そ、そうね」


 ダメだ、早くも効果が切れてしまったようだ。優しくなっていた美華ちゃんの目元がまたキリッと持ち上がったので、私も大人しく居住まいを正す。

 はい、仰る通りです

 背筋を伸ばしていると、美華ちゃんが何処からともなく取り出した眼鏡を掛け出した。師匠、似合っておりますが迫力が更に増して叶恵ガクブルですぜ? 伊達? 見た目から入る? さいですか


「先輩質問です」

「はいッ」

「お昼に誘った回数は?」

「い、一回です」

「お相手は?」

「泣きの田中くんです」

「アウト!!」


 ビッシぃっと突き付けられるパン。気分はさながら壇上の被告である。

 やはりダメでしたか! ダメですよね! すみませんっ

 完全に上司のお付き合いで行ってくれた田中くんは無カウントとなると、つまり0である。ううむ、これは師匠が怒るのも無理はない…

 そうは思いつつも、やはり会社の人、特に男性をいきなり誘ってみるということに思わず尻込みしてしまうのである。今まで仮にも婚約者が居た身なので、誘われるのも誘うのも経験自体が全然無いのだ。そりゃあったら困るが。勿論、これでも大人なので仕事やら付き合いでの誘いならすんなりと言える。しかし何故だろうか、やはり経験やら自信が無いからか、改まってと思うとつい臆病になるというか、ネガティブな方へと思考が流れてしまうのである。


「でも美華ちゃん、改まって私がいきなり誘い出したら、相手の子だって警戒するし迷惑じゃないかしら。ほら、お局が狙いにきたぞーみたいな」

「何後ろ向きなことを言ってるんですか! むしろ鉄壁ガードだった先輩に近付きたい方はいっぱい居るんですから!」

「ふふ、相変わらずお世辞が上手ねぇ」

「先輩は相変わらず頑固で鈍感です!」


 なるほど、褒め上手なのもモテテクの一つなのだろう。流石美華ちゃんである。私なんかはとっくの昔に懐柔されて既にめろめろ状態だ。何故か不貞腐れている美華ちゃんへ貢物ようかんを追加しておく。ふふ、哀しきかな、顔も平凡だと自覚してるし取り立てて魅力もないのに、こんな中古物件わざわざ近付きたい人が居るわけないだろうに

 …うむ、もっと追加しておこうかの?


「先輩の元婚約者だって、絶対2人や3人くらい遊んでたに違いないのに、先輩は律儀に操立ててるし、先輩と恋バナトークしたかったのに出来なかったし、先輩をフッたあんなののせいで! くぅ、あんなのなんかに邪魔されて!」

「ありがと、でも憶測で人を悪く言ってはダメよ? あんなのでもこんなのでも何でもね? それは美華ちゃんに却ってきちゃうから」


 先輩の為に荒ぶってくれる義理に厚い不機嫌なお猫様をよしよしと宥めていると、恨めしそうな視線が届いた。なぬ、こりゃ父の所に居た眼光鋭い野良のボス猫レベル…!


「う…うう、先輩の損レベルのお人好し加減に尊敬すべきか、もう心配すべきかわかりません。もやもやというか、むしゃくしゃします…!」

「ご、ごめんなさいね?」


 今にも盗んだバイクで走り出しそうな美華ちゃんに慌てて顔の前で手を合わせる。何故謝っているのか分からないが、不機嫌なお猫様にはひたすら猫缶やなでなでで尽くす派である。たまに余計鬱陶しがられて猫様ボディークロ―を喰らうが。まぁ謝罪に疑問符が付いたのはご愛敬だ。ちろりと下から伺う様に美華ちゃんを見つめると、美華ちゃんが頬をほんのり赤らめ余計に眉をひそめた。なぬ、逆効果だっただと


「先輩ずるい。はい、許します~」

「ははー」


 寛大な処置に大げさに反応すると、少ししてお互いに限界が来て笑いあった。

 うーん、今考えてみれば実際にお相手を探す気でいってるのだし、待たずに動いて幸せになってみせると決意したばかりだしね。女叶恵、年齢を考えよ、30なんてあっという間ぞ。周囲の目をきにしてどうする。

 自分で現実を見つめ直して恐怖、もとい鼓舞していると美華ちゃんがコホンと咳払いをして眼鏡をキリッと持ち上げた。

 

「はい、ということで先輩には私が選りすぐった人達と合コンして頂きます! 幹事は僭越ながら私が担当しますので、先輩は大船に乗った気で居てください」

「え、ええっ? ええっと、ご、合コン?」

「そうです! お相手は医者と弁護士と味方一の三人予定です。狙い目は医者の方ですが、顔が微妙でしたら弁護士もありですね。商社マンはアレのことがあったので私が嫌で除外してます」


 思わず我が耳を疑ってぽかんと一拍考えてから慌てて問い返すと、何処からともなく手帳を開き大真面目にリポートが始まる。

 味方一…、根回しまで半端ない…

 合コンという耳慣れぬフレーズにさえ慌ててる私には既にお腹いっぱい状態である。仕事が早すぎて心が追い付いてないです師匠…!


「み、美華ちゃん、私にはまだすこーし早いんじゃないかなぁって。ほら、合コンに実は行ったことが無くて…」


 そう、お恥ずかしながら女叶恵、合コンに行ったことが無いのである。幼馴染で婚約者の居る身で行こうと思う筈もなく、遠慮されてか呼ばれる訳もなく。人数合わせにすら呼ばれたことがないのは合コンなど行かぬタイプの真面目気質な友人が多かったからであろうか。

 うう、正に合コンのプロ、お姉さんとばかりの風格漂う美華ちゃんには呆れられてしまいそうね。こうなると適度に遊んだりなどしなかった不勉強な我が身が恥ずかしく思えてくるのである。

 だが明らかに戦闘力が足りていないと自覚しているので中止させるべく呆れられること覚悟で恥を忍び告げれば、美華ちゃんは何故か目を潤めていた。心なし息が荒い気がする。ひいっ、師匠がお怒りじゃぁっ。すみませんっ、私の為にわざわざセッティングして頂いている身で尻尾巻いたようなこと言ってすみませんっっ

 ぷるぷると別の意味で震えていると、手帳を閉じた美華ちゃんがこくりと水筒のお茶を飲んだ。


「ふぅ、先輩の『はじめて』はこの『私』が素敵にプロデュースしますので、きっと楽しいものにしてみせますよ。大丈夫です。先輩はいつも通りにっこり微笑んでいればいいんです」

「そ、そういうものかしら」


 天使な美華ちゃんの微笑みスマイルにそういうものなのかと洗脳される。なんかやけに強調された箇所があったけれどそれだけ張り切ってくれているのだろう。うう、不安しかないけれど此処まで言ってくれているのに駄々をこねるのもより迷惑かな…。

 やらかす未来を幻視するけれど、ここは美香ちゃんの心意気に報いるべきであろう


「じゃあ…、お願いするわね」

「はい!」


 覚悟を決めて恐る恐る頷くと、美華ちゃんはぱぁっと花が開くように喜んだ。ほっ、この喜びようを思えば未来のさしたる失敗など供養されよう、うむ。なお、無事に終わるとは微塵も思っていない。

 とはいえ今はこのスマイルを愛でようではないか。まるで食べた猫缶がとっても美味しかったかの様な笑みに思わずさらなる供物を捧げたくなり塩分おせんべいを奉納しておく。


「先輩、そうと決まったら特訓ですよ! 服と、データと、これが質問予定の分なのでこれを見て頂いて…、あ、場所と時間は決まり次第ご連絡致しますね。それから――」

「ええっと美華ちゃん?」


 きらりと師匠モードに入った美華ちゃんは手帳を書き写し始めている。さっきから私『え?』しか発音していない気がするぞ。にっこり微笑んでいれば…の前にやはり戦闘力強化が必要なのだなと頷いていると、美華ちゃんは書き終えたメモを渡しつつ述べた。


「戦いは、準備が九割です」

「いえっさー」


 思わず歴戦の将校を幻視して敬礼した私は悪くない。


 っと、おや? 

 歴戦の将校も傷ならぬうっかりなところもあるらしい。

 思わずくすりと唇が綻んでしまい、親指をのばして美華ちゃんの唇の横へそっと滑らす。


「おせんべい、付いてたわよ。うっかりさんね」

「て、……天然ジゴロ…」


 恥ずかしかったのか美華ちゃんが俯いている間に手を払っていると、顔を上げた途端恨みがましい目で見られてしまった。不機嫌なお猫様かわいい、実家帰ったら撫でまわしたいなぁ。

 はっ、というかつい妹にするみたいに馴れ馴れしくしてしまったわ。

 子供扱いしてしまったと慌てて謝ると、特訓は一部無しになってしまった。うう、師匠見捨てないでくだせえっ

 貢物が尽きてしまったのでしょんぼりと肩を落としていると、不意に美華ちゃんが目を鋭くした。

 えっ、尽きたのがバレてしまったの? ごめんなさい、また明日持って来てあげるからね

 ついお猫様へと同じ思考になっていると、不機嫌にもぐもぐと口へと卵焼きを運んでいた美華ちゃんが目線を後ろへとずらす。不思議に思い視線を追うと田中くんがお昼をとるところであった。どうやら本日もコンビニで購入したようである。

 ふと、田中くんの提げている半透明のコンビニ袋から『悪魔的…』なる文字が一瞬見えた。

 …んんっ!?悪魔的…?悪魔的な、何??一体何を買ったの田中くん!?

 思わず半透明の袋を透視しようと試みるも残念ながらそのような能力などない。うわ、気になるっ。あの田中くんが、悪魔的何を買ったのか気になるよ田中くん!!

 今日も眩しい天然七三わけとクールな無表情塩顔に、読ませるのじゃその思考と念を飛ばしているとふと閃いた。

 そういえば、いまゼロカウントだし、今度こそ師匠の前でお昼を誘ってみようか。まぁ女二人の中に入りづらいだろうし断られる可能性大だけど、こう、その流れで悪魔的なのをこう…

 主目的が別になりつつ、意識がそちらへ持って行かれていた為てらいもなくお誘いを口にすることが出来た。


「田中くん、お昼一緒にどう? その悪魔的なのも、下の家族マートで買ったの?」

「いえ、これはシカクーソンの方でくじが当たりまして…。すぐ戻るので大丈夫です」

「そう…」


 ふむ、どうやらシカク―ソンでくじが当たったらしい。なるほど、田中くんが田中父のように冒険するのは珍しいなと思っていたがそういうことだったのか。とはいえ、悪魔的な何だったのか過分に興味を引かれつつ、また質問もできずにすごすご白旗を上げる。うう、お昼も断られてしまったし、美華師匠に意欲だけは見せたよと評価して頂くしか…!


 恐る恐る美華ちゃんの方へと視線を戻すと、何故か唇を尖らせている。あひる口がぷくりとむくれており、どうしてかやらお怒りモードというよりも拗ねているようである。はて、何故であろうか。もしかして一声も掛けずに勝手に相席させるなよとかであろうか。

 二人は仲が悪かっただろうかと少し不安になる。二人とも出来る部下であるためもし不仲であっても大人な対応をするであろうが、勿論関係は良好な方が望ましい。それに折角の私の初部下たちなのである。仲良くあってほしいと思うのは親心ならぬ上司心としては一般的であろう。

 うーん、少し前までそんな様子全然なかったと思うんだけどなぁ。でも私も最近自分のことでいっぱいいっぱいで周りに目を向けれてなかったし…

 以前から美華ちゃんが田中くんをうっすらライバル視していたような気はしていたのだが、それは仕事熱心で向上心の強い美華ちゃんらしいものでプラスになるだろうと判断していたため、こうなるとまた一度考え直す必要も出てこよう。

 思わず色々と不甲斐ない自分へと溜め息を飲み込んでしまうと、気付いた美華ちゃんが慌てていた。


「ぼんやりしてましたすみません!」


 そうして、少し田中くんの方へ視線をちらりと投げてから少し目を細めた。


「先輩、合コンの日程なんですけど、2週間後の土曜日の19時とかどうでしょう。場所は宵月を予定してまして」

「ええ、別にそこで大丈夫よ。予約しておきましょうか?」

「いえ、お任せください。あ、少し用事が出来ましたんで先に失礼しますねっ」


 宵月かぁ。あそこお鍋が美味しい居酒屋って評判なのよねぇ。一度行って見たかったから楽しみである。人気店とはいえ忘年会シーズンも終わった今なら2週間前なら予約も簡単に取れるだろう。先程は場所や日時は決まってからと言っていたが、いい場所が閃いたから先に提案してくれたに違いない。流石ナイスセンスよ美華ちゃん!

 にこっと笑ってぱたぱたと風呂敷を畳む美華ちゃんに、私も切り上げるかと急いでお弁当を頬張っていると、先に席を立った美華ちゃんが田中くんと何か少し話していた。


 一瞬田中君と視線が合った。首を振る田中くんに何故か目に見えて不機嫌になった美華ちゃんは、颯爽とドアから出て行く。

 自分でももきゅもきゅとキャベツを頬張りながらなので何処か間抜けに思いつつ、心配になって田中くんへと声を掛けてしまった。


「田中くん、美華ちゃんと喧嘩しているの?」

「いえ、違いますよ」

「えっと、じゃあさっきのお話は…?」


 どうやら喧嘩しているわけではないらしいと一息ついていると、少し思慮するように目を伏せた田中くんが薄い唇を開いた。


「小林さんが合コンへ行くなら…参加するかどうかの確認でした」

「…来るの?」


 きょとりと思わず目を瞬いてしまう。予想外の回答であった。予想外過ぎる美華ちゃんの質問だったので、他意なく続きを促してしまう。そして先程の光景と仕草を思い返し、返答は自ずと分かった。

 案の定「いえ」と首を振る先程と同じ姿に苦笑してしまう。美華ちゃんも私が緊張するからと田中くんを呼ぼうとしてくれたのだろうか。土曜日までわざわざ上司に付き合わすなんてそんな申し訳ないことなどない。田中くんらしく遠慮なく断ってくれて良かったと思っていると、視線を上げた田中くんと目が合った。田中くんは相手の目を真っ直ぐ見て話すから、後ろめたいことがある人は緊張するだろうなぁとそのひたりと澄んだ視線によく思う。


「小林さんは」

「うん?」

「参加した方が良かったですか?」

「そうねぇ…」


 すぐさま、上司に土曜日まで付き合わたくなかったから断ってくれて良かったと返そうとして、田中くんの真っ直ぐでひたむきな視線に一つはくりと呼吸を呑んだ。

 

 心の奥まで見透かされそうだ


 苦笑して、腕を上げて視線をペットボトルで遮る。食事で少し剥げてしまった乾いた唇をお茶で潤してから自分で途切れさせた続きを繋げた。


「実は合コン初めてなの。だから恥ずかしいところを見られる気しかしないから、断ってくれて良かったわ」


 結局、嘘ではないが余計なことを零してしまった。

 やっぱり田中くんは手強いと思うのだがどうであろう。

 セリフと場を誤魔化すように日本人の秘儀愛想笑いを繰り出していると、田中くんが半透明のコンビニ袋から取り出して机の上に置いた。

 悪魔的なチョコケーキだったんだ…。視線で追って簡単に明かされた答えをぼんやりと思っていると、ふと気付けば田中くんが席を立ってことりと目の前の机に悪魔さんが置かれた。

 はて、何であろうか?


「これ、目で追ってたので良ければ。当たっただけのものなので」

「ごめんなさい、名前が気になって見ていただけなの。物欲しそうに見えたなら謝るわ。逆に折角当たったんだから食べないと」


 部下の当たり物を奪うなどなんという鬼のパワハラ女か!慌てて首を振ると、また少し思慮するように目を伏せた田中くんが少し唇を上げた。 

 あれ? また笑…


「小林さんの初めてに行けないので、代わりに貰ってください。食べるのは初めて、ですよね」


 少し問いかけるように語尾を上げる様子に、滅多に見ない微笑に思わず心中で唸る。貰ってくださいと言葉では殊勝に言われた筈なのに、何処か挑戦的に聞こえてまるでくださいと言われたかのようだ。うう、気のせいに違いないけどっ

 ぐぅっ、田中くん実は田中父譲りの天然キラーだろう! 何でそんな声でそんな風に言えるのだ! 普通に「俺っち食べる気分じゃないからあーげる☆」とかでいいじゃないか!!いや、そんな風に言われた日には幻聴を疑い即座に自分の有給申請か、田中くんの熱を考えるが。

 それとも変に聞こえる我が耳がおかしいのだろうか。そうだよね、我が耳が腐っているだけだよね!それもそれで大変だが。


「えっと、ありがとう」


 反射的に悪魔さんを受け取ってからちらりと傍に立つ田中くんを見上げた。

 すると、無表情に戻っていたのに、その目がやけに悪戯気に見えた。というか、絶対これは


「いえ、どういたしまして」

「田中くん、わざとでしょ」

「何がですか?」

「さっきのよ」


 まるでそんなことを言う私が変かのように不思議そうである。

 もしや無自覚か!無自覚なのか! これが天然パうわーなのかと愕然としていると、ふと引っ掛かる。

 ん? 確か田中君微笑んでたわよね?

 気付いた瞬間思わずじとりと恨みがましい目を向けてしまった。この無表情役者め。美華ちゃんが可愛らしい小悪魔だとしたら、田中くんは可愛げのない小悪魔に違いない。そのサボってるお顔の筋肉がほんとうにすこーしだけ働く時が、今のところ悪戯する時だけだなんてどういうことなのだ。

 というか、遠慮なくばっさりと行かないと決めてたのに、行けないと言い換えるとはこの小悪魔さんめ!悪魔チョコさんに弟子入りしてデロ甘になってきなさいな!


「惚けても無駄だからね。田中くん意地悪な時は少し笑うもの。さっきも、勿論ね」


 名探偵ばりにどうだと指摘すれば、ぱちりと大きく一つ瞬きした田中くんは口元に手を当てた。前の引っ越しのお手伝いの時もそうだが、その様子は自身でも不思議そうという感じである。

 勝利の報酬として悪魔さんにコンビニスプーンを差して想像通りのデロ甘さに思わず頬を緩めていれば、田中くんが空いたスプーンのごみを片付けて目を細めた。


「さぁ、どうでしょうね」


 思わずまた無表情が少し動いてるんじゃないかと見上げるが、どうやら今回はお仕事しなかったようである。


「そう」


 まぁ今回は悪魔さんのデロ甘さに免じて許してあげましょうと頷くと、そうですと田中くんも頷いてお昼の時間は終わったのであった。









 

 



 

◇悪魔的なチョコケーキ◇

 見た目は真っ黒。悪魔的なまでにデロ甘い。悪魔的なまでに入荷が遅い。悪魔的なまでに売っている場所も少ない。悪魔的なまでに美味しいから中毒性がある、正に購入者泣かせの悪魔の一品。

 シカクーソンの限定店舗のみ販売中。今回は偶々田中くんがくじで引き当てたようである。なお、この店舗では通常販売しておらず、まるで購入者を嘲笑うかのようにくじで当たった者しかゲット出来ない仕様である。正に悪魔の所業ッッ!!

 そんなんで売れるのかと疑問だがプレミアにプレミアがついてかなりの大人気っ子である。ネット界ではモッテモテ。買えたあなたは幸運児ですねおめでとう!!!

 なお、後日案の定ハマった叶恵さんがシカクーソンを徘徊し、結局一個も手に入れられずネットの価格を見て顔を青くしたところまでがオチである☆


 

 次話の予告日を書けないので悪魔さんでお茶を濁すぜ!真っ黒にな!!(悪魔的な作業

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