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妻だった人。
私には百合と云う名の妻がいた。いたと云う事は過去形になっている事を示す。そう、彼女は6月下旬頃、2人の子供を残し、此の世を去ってしまったのだ…。何故なら、彼女は《連続婦女暴行絞殺事件》の被害者になってしまったからだ。
彼女の遺体に立ち会った時の事。
彼女は、眠っているかに視えた。今にも起き出して、いつもと変わらない笑顔を向けるのだろう。と、そう錯覚しそうだった。生きているのか、其れとも死んでいるのか判別出来ない…。ソレほど迄に彼女の遺体は綺麗だったのだ…。
ただ1つの箇所を除いて…。
彼女の遺体の1部は変形していた。首の骨が大部分砕けてしまっているらしく、グニャリと首はネジ曲がっている…。半開きの唇からは、艷やかな舌がチラチラと此方を覗き込んでいた。
其の姿は、まるで蛇の様だった…。
妖艶で淫靡的で刺激的だったのだ…。
彼女は爬虫類が好きだった。特に蛇への愛着は度を越している様にも思えた。死に際に、彼女は蛇にでも成ってしまったのだろうか…。ソレほど迄に蛇への憧れがあったのだろうか…。
そう思案していた時の事だった…。
彼女の遺体は、唐突に眼を見開き、ギロリと此方を睨んだのだ。ビクリと私の肉体は反応する。
「あぁ。気になさらずに…。よくある事なんですよ。」
隣に居た法医学医は、そう云った。




