第47話 集結の刃、誕生阻止の誓い
王都各区に散った仲間たち。
北区ではカリサが進化した「兵器の芽」の巨像に挑み、南区ではリリアが「幻影の芽」と孤独な戦いを続けていた。
そして中央区、アリエル・ローゼンベルクは「芽の塔」の心臓が形成されてゆくのを目撃していた。
◆ 北区 ― カリサ
炎槌の一撃で巨像の膝を粉砕し、火花が散る。
だが巨像はすぐさま再形成し、より硬質な鎧で全身を覆った。
「……さすがにしつこいな!」
カリサは息を荒げつつも、瞳は燃えていた。
「……でも、私の拳は絶対に折れねぇ!」
全身の炎を槌と同化させ、爆ぜるように叩きつける。
たとえ倒せなくても、自分が時間を稼ぐ。それが仲間に繋がると信じていた。
◆ 南区 ― リリア
幻影の中でリリアは自分の家族――亡き父母の姿に囲まれていた。
「どうして……どうしてお前は解放者に仕える……」
「いずれ彼女も廃墟になる……お前も道連れだ」
涙が頬を伝う。
しかしリリアは震えを抑え、祈りの杖を強く握った。
「……そうかもしれない。でも、彼女が“今”を生き抜くと決めたから、私は信じる!」
光の祈りが幻影を溶かし、残骸の根を縛り付けた。
「ここは渡さない……! 早く、アリエル様のもとへ!」
◆ 中央区 ― アリエル
「……心臓が、完成してしまう……」
芽の塔の中心に浮かぶ赤黒い核。
それは鼓動を速め、まるで「第二の廃墟の主」として王都の新たな災厄を名乗ろうとしていた。
胸の裂け目が叫び、影の声が重なる。
『お前だけでは斬れぬ……仲間の力を束ねろ……』
「……そうだ。私は一人じゃない」
アリエルは剣を掲げ、叫んだ。
「カリサ! リリア! 今ここに集まって!」
彼女の声が王都に響き渡る。
◆ 集結
北区で燃える拳を振るっていたカリサの耳に声が届き、彼女は残骸を吹き飛ばし駆けた。
「……待ってろ! 必ず隣に立つ!」
南区で涙を拭ったリリアもまた、光の橋を架け残骸を封じた。
「アリエル様……今こそ、共に……!」
二人は血と汗にまみれた姿で中央区へ駆け込み、アリエルの両脇に並び立つ。
「遅れて悪かった!」
「ずっと共にあります!」
アリエルの瞳が燃える。
「みんなの力を――束ねる!」
彼女の剣が紅黒に輝き、そこへリリアの祈光とカリサの炎槌の炎が注ぎ込まれる。
三つの力が一つとなり、眩い閃光の刃が形成された。
「――〈因果断絶・三位一閃〉!」
振り下ろされる斬撃は塔の芽を真っ二つに裂き、形成途中だった心臓ごと消し飛ばした。
轟音と共に黒い残骸は灰となり、王城跡地に静寂が訪れる。
◆
民衆が遠巻きに見守り、状況を理解した瞬間、歓声が爆ぜた。
「やった……!」
「三人が……街を救った……!」
旗印は一人ではなかった。
灯された希望は、仲間という支えに広がり、王都全体を揺らしていた。
アリエルは剣を下ろし、荒い息を吐きながらも微笑んだ。
「……これで……次の廃墟は生まれない」
だが同時に、胸の裂け目の奥で小さな鼓動がまだ燻っていることを、彼女だけが知っていた。
――戦いは終わったわけではない。
それでも今は、旗を共に掲げる仲間と立てた誓いが、すべてだった。




